腕に味に自信あり!【特集】看板のないお店
お店と言えば、屋根や外壁に店名や業態を記した大きな看板があるもの。との既成概念を覆し、あえて看板を掲げないお店がある。知らずに通り過ぎているかもしれない「看板の
ないお店」を探してみよう。
【ベーカリー】地域との一体感を優先 ~瓦山 bakery&cafe(仙台市青葉区台原)~
閑静な住宅街に昨年7月、米こうじでできた天然酵母を使ったパンを作るベーカリーがオープンした。空き家を改築した建物は、お店とは気付かないほどひっそりと立つ。「地域に溶け込んだ雰囲気を壊したくなかった」と話す店主の渡辺晃さん(49)は、看板を設置することは考えなかったという。
こだわりは、低農薬米と小麦、水、こうじだけで作る「あこ天然培養酵母」のパン。低温でじっくり発酵させた生地から作るパンは、自然な香りとうまみにあふれ、添加物はもちろん、卵やバター、牛乳も使わない。
看護師や老人ホーム経営の経験がある渡辺さんは、体に与える食べ物の影響の大きさを実感。若い世代にも伝える場にしたいと、店内には体に優しい食事を提供するカフェも併設した。
【Data】
仙台市青葉区台原4-14-21
TEL080-1392-1724
営/木・金曜11:00~18:00、土・日曜11:00~17:00
休/月~水曜
【フラワーショップ】お客に寄り添う秘密基地に ~Palier de Shiho(パリエ ドゥ シホ)(秋保町)~
秋保温泉の景勝地「磊々峡(らいらいきょう)」の遊歩道入り口前に、ひっそりたたずむお花屋さん。目の前の道路からも、店の入り口の前に立っても、その存在にはなかなか気付けない。
切り盛りするのは店主のShihoさん。温泉街のホテルで「リゾートバイト」をした際に地元の人たちの温かさに触れ、パリの有名生花店で1年間技術を磨いた後、秋保に戻った。2022年5月に現在とは別の場所に初めての店を構えた後、今年5月に現店舗に移った。
看板を掲げない理由をShihoさんは「お客さん1人1人に寄り添いじっくり仕事がしたい。そのためにも知る人ぞ知る秘密基地にしたかった」と話す。
それでも、丁寧な仕事ぶりは人づてに広がり、地元の人はもちろん、旅館や会社の催事会場などをお花でデコレーションする仕事が入るようになった。
【Data】
秋保町湯元枇杷原(びわはら)20
TEL080-3320-2037
営/10:00~17:00(配達などにより不在時あり)
休/不定休(Instagramで要確認)
【居酒屋】人が人を呼ぶ憩いの場 ~わどな(仙台市青葉区中央)~
仙台銀座南端の入り口にある古びた建物。昼にカレーライスを提供する2階の居酒屋には、1階の入り口も含め看板は見当たらない。店主の太田謙三さん(41)は「知り合いやお客さんとのつながりだけでやっていけているから」と照れくさそうに教えてくれた。
太田さんが居酒屋を始めたのは18年ほど前、一番町のお店だった。その頃から、「お客さんが来なければ看板を掲げよう」と思っていたが、8年前に移転オープンした現在の店舗も含め、看板を設置する必要に迫られたことはないという。太田さんは「お客さんとよく話し、できる限りの要望に応えているうちに、お客さんがお客さんを連れてきてくれるようになった」と話し、SNSなどでの宣伝もするつもりはないという。
【Data】
仙台市青葉区中央3-9-12 仙台銀座内 Y’s中央ビル2F
TEL090-6788-2339
営/12:00~なくなり次第終了、17:00~要電話確認(貸し切りは個別対応)
休/なし
【ラーメン店】渾身の一杯に資金を集中 ~中華蕎麦 會 (亘理町)~
亘理町の国道6号沿いに、ラーメン好きがこぞって訪れる「中華蕎麦 會(かい)」がある。2018年7月にオープンした建物の屋根には、以前入居していた飲食店の看板が残されているが白く塗りつぶされたままだ。
店主の小野田拓也さん(43)に聞くと、「看板を作りたかったけど当時は資金が足りなかった」と教えてくれた。お店が軌道に乗ってからも、製麺機を購入して自家製麺に切り替えるなど、味を追求するあまり余裕はできなかったという。
そんな小野田さん渾身の一杯が、煮干しラーメンだ。全国から取り寄せた煮干しを使った「あっさり」と「濃厚」のスープをはじめ、どれも独学の末に編み出した味だ。こだわりの味は口コミで伝わり、うわさを聞きつけた客がきょうも遠方から押しかける。
【Data】
亘理町逢隈神宮寺一郷275-1
℡0223-35-6557
営/月、水~土曜 11:00~14:00、日曜11:00~15:00
休/火曜
【焼き肉店】「大人の隠れ家」を演出 ~炭火焼肉 福わらひ2(仙台市青葉区春日町)~
仙台市街を東西に貫く定禅寺通。お店があるはずの西公園近くのマンションの前まで来ても、その存在を示すものは見当たらない。恐る恐る入り口をくぐり奥に進むと、右手に店名が書かれたあんどんを見つけ、やっと存在を確認することができる。
昨年6月、福島市に続く2店目としてお店をオープンさせた福井誠社長(43)は「若い人を中心に、SNSで調べ目的地を決めてから出かける人が多い。分かりづらい方がたどり着けた際の高揚感もある」と、人目に付かない店舗造りの狙いを話す。看板代わりとするのがInstagramだ。こだわりの赤身肉や希少なお酒を写真で発信することで、オープン直後からお客さんが来なくて困ったことはないという。
【Data】
仙台市青葉区春日町3-4 メゾン定禅寺103
TEL022-797-6606
営/11:30~LO14:30、17:00~LO22:30(夜営業は未成年者不可、早め終了の場合あり)
休/なし
【ペットホテル】ネコをひっそりおもてなし ~猫専門ホテル またたび亭 (仙台市宮城野区平成)~
1階にバイク店と不動産店が入る建物の2階。ここに大のネコ好きが営む完全予約制の猫専門ホテルがある。建物に看板はなく、入り口に「CAT HOTEL」と書かれた小さなボードが置かれているだけだ。
オープンは2020年春。保護活動にも力を入れる店主の日地谷祐次さん(49)が「ネコに関われる仕事がしたい」と始めた。「(ネコのことを最優先に考えた)やり方を理解してくれる人だけが利用してくれればいい」と看板を掲げることは考えなかったという。
お店の情報は、広告デザイナーでもある日地谷さんが制作したHPやInstagramで発信。ネコへの思いを知った人や口コミで利用者は増え、「こんなに忙しくなるとは思わなかった」(日地谷さん)と話すほどの盛況ぶりだ。
【Data】
仙台市宮城野区平成2-14-10 2階
TEL022-354-0187
営/11:00〜20:00
休/なし
(河北ウイークリーせんだい 2024年9月12日号掲載)
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