米高騰、石巻にも波及 昨年産品薄影響、概算金は最高値 販売店「先見通せず」
2023年産米の品薄を背景に、24年産米の概算金は全国的に主要銘柄で軒並み最高値を更新した。生産コスト上昇にあえいでいた農家は歓迎する一方、消費の落ち込みを懸念し、消費者や販売業者は販売価格の高騰に不安を募らせる。「令和の米騒動」は米どころ石巻地方にも波及している。(相沢美紀子、漢人薫平)
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県産の新米を並べた石巻市のぞみ野2丁目の「あいのや石巻のぞみ野店」。来店客が値札を悩ましそうに見つめ、手を伸ばさず通り過ぎた。ひとめぼれは10キロ5980円と、前年比7割増に。打撃を受けたのは目玉商品の「250円弁当」だ。ひとめぼれの新米を使う。担当者は「売れば売るほど経営は厳しく、価格の見直しを検討している」と明かす。
市内で3店舗を経営するみやぎ生協(仙台市)の担当者も「ここ10年経験したことのない高値で先は全く見通せない」と心配する。
消費者は頭を抱える。同市中里2丁目の主婦の女性(57)は「家計を圧迫しているが、お米は減らせない」と嘆く。夫、長男との3人暮らしで、弁当を含め3食必ず米を食べる。女性は「おかずの価格を下げて調整したいが、食材は軒並み値上がりしている」と悲鳴を上げた。
生産者と消費者の間で揺れるのは流通業者。コメ卸の宮城商事(石巻市前谷地)は新米のひとめぼれ30キロを前年より5000円高い1万3900円で販売する。担当者は「農家にとっては今までが割に合わない値段だった。喜んでもらっている」と話す。
一方で「お客さんには何とか納得してもらっているが、心が痛い」と吐露。「仕入れ値が高い分、それなりの値段で売るしかない。市場の価格が下がるようなことがあれば困る」
燃油や肥料、農機など稲作のコストは高まる一方だ。いしのまき農協(同市)が9月4日に決めた生産者への24年産米概算金は、ひとめぼれが1万5900円(60キロ当たり)で、前年より4300円増えた。
同市桃生地区の農業法人代表の男性(50)は「コスト増で苦しい状況が続いていたのでありがたい」と歓迎する。一方で「一過性では困る。来年下落すれば、給料などの支払いが難しくなる」と懸念も口にした。
同市須江の農事組合法人「たてファーム・和(なごみ)」の高橋弘総務部長(68)は「若い世代に就農してもらうには米価上昇は重要だ。生産現場の現状を消費者に理解してほしい」と期待する。