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仙台「岩松旅館」大手資本と提携で見えてきた作並温泉の苦境 コロナ禍直撃、客足戻らず

大江戸温泉物語と業務提携した岩松旅館=仙台市青葉区の作並温泉

 仙台市青葉区の作並温泉の老舗旅館「鷹泉閣(ようせんかく)岩松旅館」が7日に明らかにした大江戸温泉物語ホテルズ&リゾーツ(東京)との業務提携は、作並温泉郷全体の苦境を浮き彫りにした。コロナ禍で激減した客足が思うように戻らず、地元資本だけで集客力を高めるには、資金もノウハウも限界があるという。「時代の流れかも」。老舗の決断を関係者は冷静に受け止めた。

堅調な秋保温泉と明暗

 岩松旅館は江戸期の寛政8(1796)年に創業。岩松家11代目の喜惣治が仙台藩主の伊達斉村に開湯を願い出たのが、作並温泉の始まりとされる。岩松旅館は作並温泉の「象徴的な存在」(関係者)で、現社長の岩松広行氏は作並温泉旅館組合の組合長を務める。

 200年以上続く老舗旅館が大手資本との業務提携を選んだのは、集客回復の遅れや施設の老朽化といった課題に、自力で対応できなくなったことが大きい。

 岩松社長は河北新報の取材に「3年間も満足に営業できなかったコロナ禍で大きなダメージを受け、どこかと手を組まなければいけなくなった」と明かした。

 コロナ禍後は岩松旅館に限らず、作並温泉郷全体が苦戦を強いられている。

 宮城県観光統計概要によると、作並温泉の観光客入り込み数はグラフの通り。最新統計の2022年は約10万人で、コロナ禍前の19年の半分にも届いていない。同じ仙台市内の秋保温泉(太白区)は、22年に19年の8割近くまで回復しており、明暗が分かれた。

 作並温泉で「湯の原ホテル」を経営する菅原敬史さんは「バブル崩壊に始まり東日本大震災、コロナ禍と困難が続き、作並温泉から地元資本の宿泊施設が消えている。岩松旅館が今後どう変わるか、注視したい」と危機感を隠さなかった。

 経営再建に名乗りを上げた大江戸温泉物語は、全国でホテルや旅館など37施設を運営する。宮城県内では松島町の「ホテル壮観」など4施設を展開する。

 秋保温泉では20年に老舗旅館「岩沼屋」の経営権を取得。当初は「大江戸温泉物語 仙台秋保温泉 岩沼屋」として営業したが、23年に温泉リゾートホテルに改装して「TAOYA(たおや)秋保」を開業し、約400年続いた「岩沼屋」の屋号は消えた。

 岩松旅館は業務提携後も屋号と雇用は継続するとしている。大江戸温泉物語は河北新報の取材に「業務提携の内容の詳細は今後、調整する」とだけ説明した。

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