きもの 楽しきもの【特集】装い、気軽に自由に
ふだん着感覚で着物、和服を着る人たちを街で見かけるようになった。気軽に着物を着たり、活用したりするのは何だか楽しそう。「たんすに眠らせたままのものがあったかも」というあなたへ、一緒に着物を楽しみませんか?
着てみたいけれど着付けができない、草履は歩きづらそう、コーディネートはどうする? ハードルが高いイメージの着物。宮城県在住の会社員で日々の着物コーデをSNSで発信するsekiさんに、楽しみ方やコーディネートのこつを聞いた。
■和洋ミックス 広がる着こなし
3年ほど前に洋服をミックスして着物を着る動画を見て、自らも自由にコーディネートを楽しむようになったsekiさん。今では月に10日ほど、着物を普段着として活用する。
「着ていく場所がない」ことはよく聞く悩みの1つだが、sekiさんは着物を着る口実に用事をつくることもあるそう。「訪問着が着たいなら結婚式帰りですという雰囲気でカフェに行けばいい」と笑う。よく話しかけられたり、お店でちょっといい席に案内されたりと楽しいことも多いとか。
購入はアンティーク・リユース着物屋やフリマ、ネットショップを活用する。リユースの着物は数千円で購入できるものも多く「正絹の羽織を500円で見つけた」ことも。最初の1着に何を購入したらいいか分からない、手持ちの着物に合う帯が分からないという人は、フリマが特にお勧めだそうだ。「出店者は愛好家が多いので、相談すると喜んでアドバイスしてくれるはず」と話す。
同じ1枚の着物をスタンダードな装いで、別の日は和洋ミックスでと、着こなしの幅が広いのも楽しい。丈や袖が短いといったサイズが合わない場合も、下にサイズが合った洋服を着る和洋ミックスでOK。足元もスニーカーやブーツなど普段履いている靴を合わせれば「草履だと歩きにくい」問題も解消される。
「帯がうまく結べなかった時は羽織を着て、着物仲間に直してもらうこともあります。100%完璧に着付けができなくてもOK。思い切って外出してみて」とアドバイスする。
・スタンダード ~会社の忘年会orしっとりワイン会~
ボトルと切子のグラスの帯、ブドウの帯留め、ブドウの葉のような帯揚げ。縦じまの控えめな着物で大人の落ち着きを感じさせながらも遊び心をちりばめたコーディネート
・和洋ミックス ~家族で動物園orハンバーガーデートから
ヒョウ柄で合わせた帽子とスカート、目を引くポップな帯がポイント。インナーにはハイネックカットソー。これからの季節には首、手首の寒さ対策にもなる。足元はスニーカーで軽快にしてアクティブな1日を元気に楽しむイメージ
【和洋ミックスのツボ】
スニーカーと帽子、ブーツとバッグ、ベルトなど2~3カ所に洋アイテムを使ってみて。着物の柄に使われている色の洋服を合わせるとコーディネートがまとまる
・スタンダード ~音楽祭やジャズ喫茶へ~
小物はアイボリー系の優しい雰囲気でまとめ、アクセサリーや帯留め、帯揚げでキラキラアイテムをプラス。帯締めをト音記号の形にして遊び心を。レース足袋は下に足袋靴下をはけば秋冬も楽しめる
・和洋ミックス ~クリスマス女子会~
ファー使いや、キラキラした兵児帯を使った華やかなコーディネート。バッグや靴は黒で引き締めるのがポイント。ショートブーツは和洋ミックスで挑戦しやすいアイテム。ドットの半襟でモダンな印象に
【Profile】sekiさん
学生時代の卒業式のはかま探しで、現代的な着物のかわいさに衝撃を受け、着物の世界に興味を持つ。着物歴は15年。スタンダードな着こなしから和洋ミックスを取り入れた日々のコーディネートをSNSに投稿している。
■楽しきイベント
着物でのお出掛けが楽しめる県内のイベントを探してみた。ぜひ足を運んでみて。
・全国の逸品を格安で ~時代きもの大集合フェア~
全国の着物業者20社前後が、格安品を提供する「時代きもの大集合フェア」は県内の愛好家が心待ちにするイベントだ。基本的に春と秋の年2回開催。新品、未使用品、リサイクル、現代もの、アンティークなど多彩な品物が並び、安い物だと1000円ほどから、人間国宝の作家が作ったような逸品も数十万円で販売されることもある。事務局によると、昭和の高度成長期に大量に販売された着物が、ここ数年で市場に出回り、ぐっと買いやすくなっているという。
9月に宮城野区であった前回イベントは2000人近くが来場した。事務局は「着物が好きな方の熱意は、昔よりも大きく強くなっている印象です。魅力的な着物の世界にぜひ触れてほしいです」と話している。次回のフェアは2025年2月に開催予定。詳細は公式SNSで。
2025年2月21日㈮~23日㈷10:00~17:00
※最終日は16:00まで
夢メッセみやぎ 宮城野区港3-1-7
・好家同士で交流を ~きものでフリマ~
塩釜市で毎月第2土・日曜に、明治期の建築物「旧ゑびや旅館」を改装したカフェで開かれるイベント。県内から集まった出店者が着物や小物を持ち寄ってブースを構え、県内外の多くの来場者たちと、にぎやかに楽しむ。主催するカフェ「はれま」の店主菊池千尋さんは「お買い得品や掘り出し物がそろうのはもちろん、出展者や来場者の着物談義や交流が何より喜んでもらえています」と話す。
毎回の会場は和室の大広間で、参加者同士の距離がぐっと近く、初参加者でもなじみやすい。数百円台からの古着、手作り小物など、フリマならではの魅力的な「玉石混交」の品々を見るだけでも楽しい。
仙台市から来やすく、会場近くには、塩釜神社をはじめ和の雰囲気を持つスポットが多い。フリマに来て、着物姿で塩釜神社を散策する来場者も少なくないとか。自らも日々着物姿で接客する菊池さんは、「着物の『作法』を心配し過ぎず、お出掛けを楽しむことを考えて遊びにきてほしいですね」と笑顔を見せる。
次回のフリマは11月16日㈯・17日㈰に開催。詳細は「はれま」のSNSで確認を。
カフェはれま
塩釜市本町3-9
営/11:00~LO16:30
休/水・木曜、臨時休あり
TEL090-4557-1671
・アレンジもまた楽し
着物のままではやはり着る機会が少ないかも…という人は洋服にしてしまうのはいかが? 青葉区でアンティーク着物の販売と着物のリメークを行う「時代着物地屋のじふ」の鈴木朱美さんに聞いた。
~しまい込むよりリメークを~
店内にはリメーク済みの商品がずらりと並ぶ。一見着物か分からないようなものも。喪服とキルティングを使ったリバーシブルコート、仙台平のベストと帽子。夏用着物の紗を使ったロングブラウスは、近年トレンドのシアーアイテム(透け感のある製品)のようだ。
オーダーで作る場合は、自宅にある着物を持ち込むか、店内で着物を購入することもできる。「手持ちのお気に入りのブラウスと似たようなデザインにしたい」と決めてくる人もいれば、何にできるかじっくり相談しながら決めていく人とさまざま。
「親から買ってもらった時の思い出、着物を受け継いだ時のストーリーがあり、着ないけれども処分できずにタンスに眠らせている人が多い」と鈴木さん。リメークすることで古い物を活用した満足感もあり、何より正絹の着物で作った洋服は「着心地が良く一度試すとやめられなくなります」。
着物は一度ほどいて水通しするので、裏地をつけなければ家庭で手洗いができる。シミができてしまった着物を活用できるところもうれしい。
端切れやぼろ、大正時代のアンティーク着物も扱う。アンティーク着物は人気アニメに着物姿のキャラクターが登場した影響もあり若い人に人気だ。大正時代の製品は小さい物が多く、小学校高学年くらいから着ることができる。「はかまだと難しい帯結びもなく簡単に着付けできるので卒業式でぜひ着物を楽しんでほしい」と話す。
時代着物地屋 のじふ
青葉区大手町8-5
営/10:30~16:00 休/日曜
TEL022-265-9332
(河北ウイークリーせんだい 2024年11月7日号掲載)
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