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亡き母へ、歌声届け 仙台在住の19歳民謡歌手が国内最高峰の大会で優勝

東北高泉キャンパスの文化祭で民謡を披露する荒さん

 高校を卒業し今年デビューした新進気鋭の民謡歌手がいる。仙台市若林区の荒瑞加(みずか)さん(19)。10月にあった国内最高峰の大会で初めて頂点に立った。35歳の若さで亡くなった母の理香子さんが活躍した世界に飛び込んだ今、「一番尊敬する歌い手。いつか超えてみせる」と奮い立つ。(せんだい情報部・伊藤卓哉)

 <サァーサァーサー ダシタガ ヨイヤーアーア>
 東北高泉キャンパス(仙台市泉区)で10月26日にあった文化祭。瑞加さんが津軽三大民謡の一つ「津軽小原節」を野外の特設ステージで披露すると、生徒たちがふと足を止めた。圧倒的な音圧と情感あふれる節回し。歌い終えると、大きな拍手が湧いた。

 母校の後輩から依頼を受け、この日は3曲を熱唱した。三味線や太鼓で伴奏した同校1年の篠原好輝さん(16)は「本当に共演できるなんて…。迫力のある声に包まれるような感覚だった」と感慨深げだった。

 民謡一家に生まれた瑞加さんは、岩手県の民謡・民舞流派「岩月(がんげつ)福田会」に12歳で入門。数々の大会で好成績を収め、高卒後すぐにプロの道に進んだ。祭りやイベントで全国を飛び回り、多忙な日々を送る。

 さいたま市で10月20日にあった「郷土民謡民舞全国大会」の民謡グランプリの部に岩手県代表として出場。おはこの「南部木挽(こびき)唄」を歌い上げ、最高賞の「内閣総理大臣賞」に輝いた。

 双璧を成す国内最大級の「民謡民舞全国大会」が次の目標だ。理香子さんは1988年に制覇した。

 「お母さんが達成できなかった『2冠』を実現させたい」。来年10月の本番に向け、既に気持ちが高ぶっている。

 病気だった理香子さんは治療ではなく出産を選び、1年後にこの世を去った。

郷土民謡民舞全国大会で最高賞を受賞し、祖父の昇吾さん(右)と喜びを語り合う瑞加さん

 祖父の昇吾さん(83)は短かった親子の時間を振り返る。「抱っこしながら発声の練習をしていた。聴かせるように」。知らず知らず民謡の素地が刻み込まれていった。

 往年の姿が分かる舞台の映像や音源を繰り返し見て聴いた瑞加さん。「親としてはもちろん、民謡の先輩としてお客さんに喜んでもらえるような舞台演出ができているのはすごい」

 のみ込みが早く、レパートリーは北海道、東北の民謡を中心に200曲以上に。大会当日のわずかなリハーサルで、自在に歌いこなす技量を身に付けた。

 民謡に流行歌の要素を取り入れ、若い世代のファンを増やしたいとの青写真を描く。「新しい民謡を確立することが伝統の継承にもつながる」。母を超え、新たな地平を切り開くと心に決めている。

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