閉じる

閉店迫る東京の宮城ふるさとプラザ お客いっぱい、かごもいっぱい「古里を感じられる場」

平日も客でにぎわう店内=4日

 15日に閉店する宮城県アンテナショップ「宮城ふるさとプラザ」(東京・東池袋)が、駆け込み需要でにぎわっている。2005年7月の開店以来、店に通い続けた都内在住の県出身者らが、名残を惜しむように県産品を買い求めている。

 4日午後4時過ぎ、客が入れ代わり立ち代わり来店した。年齢は幅広く、下校途中の高校生から通院帰りの高齢者まで、老若男女が商品を手にした。

 塩釜市出身で、東京都北区の無職立花よし子さん(80)は、結婚を機に宮城を離れて40年以上になる。毎年、年末年始用の食材をプラザで買う。15日に閉まると知り、今年はいつもより20日以上は早く来店した。

 立花家の雑煮に欠かせないという大崎市岩出山のしみ豆腐や、おくずかけに入れる白石温麺(うーめん)、孫が好きな冷凍のずんだもちなど計約1万円分を購入した。

 立花さんは「ふるさとを感じられる場所がなくなるのはさびしい。今日は多めに買った。(15日までに)もう1回来るかもしれない」と話した。

県出身者ら続々、店長「宮城の物を買える場所を維持する役割がある」

 閉店が迫った11月に入り、じわじわと売り上げが増え始めた。同月の売上高は約4900万円で、約4000万円だった前年同期比で2割強も増えた。

 のりなどの乾物、サバやサンマの缶詰、「パパ好み」などのスナック菓子がよく売れ、梅干しを大量購入する客もいた。女性スタッフは「かごをいっぱいにして買い物してくれるお客さんが多くなった印象だ」と話す。

 12月も駆け込み需要は続いている。閉店が近づいても、仕入れの量を減らせない状況だという。

 プラザを運営する県物産振興協会(仙台市)は来年1月、後継となる仮設店舗を、東京・日本橋茅場町に開設する予定だが、後継店ができることを知らない常連客は少なくない。

 協会は新店舗の地図や店舗イメージを告知するチラシを約3万部作り、買い物客に配布している。

 大蔵国孝店長は「ぎりぎりまで来ていただき、大変ありがたい。継続して宮城の物を買える場所を維持する役割があると再認識させられている」と語る。

終了日を伝えるプラザ出入り口の看板

素っ気ない宮城県 式典も、知事来店も、後継店支援も…ない

 宮城ふるさとプラザを閉める宮城県は素っ気ない対応を貫いている。閉店セレモニーは行わず、村井嘉浩知事の来店予定はない。後継店への支援もない。

 「本当にスケジュールがタイト。行っている暇はないかもしれない」。村井知事は11月13日の定例記者会見で、閉店まで残り1カ月の間には訪問しない考えを示した。

 県議会11月定例会の一般質問では今月4日、後継店の開設資金を募るクラウドファンディング(CF)の支援を巡る質問があった。

 村井知事は「いろいろな事業者がCFをしている。(プラザだけを)応援してよいのかというジレンマがある」と述べ、財政出動のみならず宣伝も断った。

 県は2005年7月、首都圏で県産品をアピールする目的で開設。家賃が月1000万円かかり、当初から費用対効果が疑問視されていた。村井知事は昨年12月に1年後の閉店を発表した。

 コロナ禍後の売り上げは上昇しており、23年度は5億3000万円。東日本大震災の復興支援で来客が増えた11年度(6億9000万円)に次ぐ額だった。

 県産品を都心で売り込む使命は終わったのか。県食産業振興課の担当者は「行政としてやるべきは事業者利益の拡大。他のツールや場を提供したい」と話す。

15日に閉店する宮城ふるさとプラザ

関連リンク

ライブカメラ