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専門店も続々【特集】こだわりのおにぎり

 日本人のソウルフードともいえる「おにぎり」。ここ数年は、街なかへの専門店の出店が相次ぎ、仙台市内とその周辺だけでも30店以上にもなった。こだわりの「おにぎり」を探してみた。

■料理人の技光る 味と存在感 ~おむすび処「浜むすび」かわまちてらす閖上店(宮城県名取市)~

旬の食材に合わせて入れ替わるおにぎりは、週末には1日300個以上が売れる

 和食店「漁亭浜や」などを展開する鮮魚店「まるしげ」(名取市閖上)が開いたおにぎり専門店。料理人の目利きと技を生かして丁寧に下処理した旬の魚介を、ごはんからはみ出すほどぜいたくに使った約20種類のおにぎりが店頭を彩る。ごはんは、宮城県産米を全種類試した上で、大崎産「ささ結」や「だて正夢」が、魚介との相性が良いと判断、使用を決めた。さらには、水加減や炊き方も追求。冷めてももちもちしていながらさっぱり食べられる手法に3カ月かけてたどり着いた。仕上げののりは、磯の香りが圧倒的に優れる有明産だ。

 まるしげの渡部正守事業部長は「品質に徹底的にこだわり、具材やのりの味をしっかり味わうことができる特別なおにぎりを楽しんでほしい」と自信を示す。

9月中旬~4月下旬のみ販売の「せり鍋」。透き通った醬油風味のスープは雑味がなく、セリの風味と食感がしっかり楽しめる
2020年にオープンした店では、週末には昼過ぎに売り切れになることもある

宮城県名取市閖上中央1-6
TEL022-398-5546
営/11:00~16:00(売り切れ次第終了)
休/なし(臨時休あり、Instagramで確認を)

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■360度 具材がたっぷり ~おむすび山咲(宮城県塩釜市)~

左から味噌に漬け込んだクリームチーズ「仙台味噌くりーむ」(300円)、脂が乗ってジューシーなシャケが人気の「しゃけ」(320円)、エビと枝豆のまぜご飯の「海老枝豆」(330円)

 1口目から食べ終えるまで、具材の風味や食感を楽しみ続けることができる唯一無二のおにぎりを提供する。秘密は、独自の調理法で具材をサンドイッチ状に挟み込んだことにある。2021年の開業に先駆け、店主の相澤さんが試行錯誤の末に生み出した方法だ。相澤さんは「具材が多く必要になり材料費もかさむが、お客さんの満足度も高くなるので」と笑う。

 こだわりはほかにも。火力が強いガス釜で一気に炊く県産ひとめぼれは、表面のうまみ成分を残すように特殊な精米を施したものだ。

 さらにさらに、テイクアウトに欠かせない包装に至っては、内側に水分を逃がさず柔らかさを保つ特殊加工を施した紙製で、食べ終えた後もコンパクトに畳んで捨てられる優れものだ。こだわりが詰まったおにぎりは、手間暇がかかる分、店頭に並ぶまでに3時間を要するという。

旬の食材に合わせて入れ替わりながら店頭に並ぶ20種類前後のおにぎりには、地元塩釜産の藻塩やのりが使われている
前職がアパレル関係だったこともありインテリアや食器には相澤さんのこだわりがちりばめられている

宮城県塩釜市旭町20-16
TEL070-8426-4171
営/11:00~14:00 休/木曜

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■「炊きたて」「握りたて」 ~おにぎりのはとや(仙台市宮城野区)~

左奥から右奥へ仕入れられた日限定の「牛丼風仙台牛」(350円)、自家製野菜と宮城野ポークを使った「茄子(なす)と肉味噌おかか」(250円)、ジューシーな魚のうまみが人気の「銀乃すけ」(300円)。手前も「牛丼風仙台牛」

 自分たちで栽培を手掛けたコメを、最高の状態で食べてもらうため、「炊きたて」「握りたて」にこだわる。その言葉通り、注文を受けてから握るため、店頭のショーケースに商品が並ぶことはない。

 店を切り盛りするのは、大学で知り合った大髙有導さんと笹沼湧さん。栗原、登米両市のそれぞれの実家で栽培する減農薬の「ひとめぼれ」を、直接消費者に届けたいとの思いから2023年、大髙さんの祖父母が営んでいた米穀店跡に店を構えた。

 自慢のコメには、南三陸町のブランドギンザケ「銀乃すけ」の大きな切り身や、厳選した仙台牛を使った牛丼の具、自家栽培の野菜で作った手作りの具材を惜しげなく詰め込む。仕上げの有明産のりは、食べる直前にフィルムを外して巻くため、のりの風味とパリパリとした食感を存分に楽しむことができる。

握りは大髙さん(奥)、具材をのせて仕上げるのが笹沼さんと、連携して1つのおにぎりを作る。こだわりのおにぎりには、ファンが定着。来店客の8割がリピーターだ
「手間を惜しまない仕事をしよう」との思いから、店名にはコメ作りの手間数にちなんだ八十八(はとや)と付けた。春ごろをめどにキッチンカーでの移動販売も始める計画だ

仙台市宮城野区松岡町54-1
TEL070-9152-9291
営/8:30~14:00(土・日曜、祝日8:00~14:00)
休/水、木曜

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■農家が生み出す母の味 ~おにぎり茶屋ちかちゃん(仙台市若林区)~

卵黄を味噌に漬け込んだ「みそらん」(手前)と、自家製味噌で握った後にこんがり焼いた「みそ」を選んだ「おにぎりプレート」。豚汁の代わりにみそ汁が付くセット(700円)もある

 東日本大震災で多くの田んぼが浸水被害を受けた若林区荒井地区の農業者らが、2013年に開いた農家レストラン。店名は、代表の佐々木千賀子さんの呼び名から取った。農家の女性らが1つ1つ握った、まさに「母の味」をその場で味わえるのが魅力だ。

 注文を受けると、熱々のひとめぼれを具材や塩とともに、ほんの数回優しく握る。そこに手際よく宮城県産ののりを巻けば、ふかふかおにぎりの完成だ。

 好みの具材が2つ選べる「おにぎりプレート」(900円)には、たっぷりの地元野菜を自家製味噌でことこと煮込んだ豚汁や、自家製塩こうじに漬け込んだ唐揚げ、自家製しそ巻きが付く。どれもほっとする優しい味だ。

 店を切り盛りする千賀子さんの長女・佐々木こづ恵さんは「スタッフが和気あいあい仕事をすることがおいしさの秘訣」と優しく話す。

熱々のごはんを手際よく握る千賀子さんの三女・松原園子さん
優しく明るい松原さん(右)とスタッフの高橋由美子さん。「仲良く楽しく」が店のモットーだ

仙台市若林区蒲町31-15
TEL022-353-9571
営/10:00~15:00
休/月・日曜、祝日

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■「鮭」専門店の迫力ドッグ ~銀結び 富谷店(宮城県富谷市)~

手前から時計回りに「サーモンとイクラのおにぎりドッグ」(600円)、「鮭マヨのおにぎりドッグ」(400円)、シャケの煮汁で炊いたご飯を使った「銀結び」(300円)

 シャケ料理専門のテイクアウト店は、女川町のブランドギンザケ「銀王」をぜいたくに使い、遊び心あふれる「おにぎり」を販売する。

 目を引くのが、のりと酢飯でできたホットドッグ型のおにぎりに、脂が乗ったギンザケを使った具材をたっぷり盛り付けた数種類の「おにぎりドッグ」だ。

 大葉の上にサイコロ状の切り身とイクラをのせた「サーモンとイクラのおにぎりドッグ」は、さっぱりした味わいで、ギンザケ本来の味が楽しめると人気だ。マヨネーズであえたシャケフレークを詰めた「鮭マヨのおにぎりドッグ」は、しっとり食感と黒コショウの風味で子どもにも好評だ。

 代表の荒善之さんは「銀王のおいしさを知ってもらえる華やかな商品を作りたかった」と考案した背景を話す。

美里町の老舗「鎌田醬油」の醬油こうじに漬けたシャケの身を使った「ルイベ丼」(700円)やふっくらと焼き上げたシャケの切り身をのせた「鮭弁当」(600円)などメニューは多彩だ
キッチンカーを使いイベントへの出店も積極的に行っている荒さん

宮城県富谷市日吉台3-9-10
TEL022-200-2490
営/10:00~15:00(土・日曜、祝日は14:00まで)
休/不定休

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■染み入る「ばぁば」の愛情 ~ばぁばのおにぎり屋(仙台市青葉区ほか)~

手前から時計回りに自家製味噌を使った「大葉味噌」(300円)、キクラゲのプチプチ食感が楽しい一番人気の「ラー油きくらげマヨ」(320円)、シャケと筋子をぜいたくに使った「鮭すじこ」(350円)

 「ばぁば」のステッカーを貼ったワゴン車で行う移動販売は、かつて同じホテルのレストランで働いていた4人が作るふっくらおにぎりが自慢だ。店名にもなった「ばぁば」は実は2人いて、日々の仕込みや商品開発のほか、「売り子」として店に出ることもある。

 開業は2022年。2人の「ばぁば」を移動販売に誘った庄司昌雄さんと三浦優香さんが青葉区内で営んでいたカフェが、コロナ禍で客足が遠のいたのを機に業態を転じた。

 自慢は、宮城県産ササニシキを火力が強いガス釜で炊き上げたごはん。ほかほかのごはんで旬の食材を取り入れた具材を包んで数回握る。すると、冷めてもふっくら、具材のうまみが引き立つ仕上がりになる。おいしさは口コミで広がり、今では県内外のイベントへの出店や、仕出しの依頼も増えるなど引っ張りだこだ。

週2、3日は出店するJR仙台駅西口のアエルの敷地内で営業する三浦さん。店頭に立つ「ばぁば」はオーバーオールがトレードマークという
ワゴン車の後部に設置した手作りのショーケースには十数種類が並ぶ。それぞれがプラスチックケースに入れられており、形崩れしにくく衛生的と好評だ

仙台市青葉区葉山町2-1 102(製造場所)
TEL080-3146-5352
営/7:30~14:00(なくなり次第終了)
休/不定休
※営業日や販売場所などの詳細はInstagramで要確認

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(河北ウイークリーせんだい 2025年1月30日号掲載)

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