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あったかい「家庭の味」独居高齢者に届けて30年 仙台・ふたばの会の弁当宅配サービス、次世代にバトンタッチ

温かい弁当を利用者(左)に手渡す市橋さん

 仙台市太白区の主婦らが中心となって30年間、1人暮らしの高齢者に温かい手作り弁当を届けてきたNPO「食事サービスふたばの会」が今月末、代替わりする。メンバーの高齢化で継続が一時危ぶまれたが、若い後継者が見つかった。活動を支えてきた女性らは、笑顔とともに次の世代にバトンを託す。(編集部・小関みゆ紀)

20~40代の担い手が新たに加入

 「お待たせしました」。19日午前、赤や黄色の風呂敷を抱え、ふたばの会代表の市橋章子さん(84)が利用者宅を巡った。この日の献立は焼きサケ、ホウレンソウのごまあえ、カボチャの煮物など。弁当を包む風呂敷はまだ温かい。

 妻が亡くなってから約10年利用している同区緑ケ丘の無職稲田学さん(89)は「まるで妻が作ったような味。『弁当』という感じがしないんだ」と満面の笑みで受け取った。

 宅配は週6日、昼か夜のいずれか。雨の日も雪の日も必ず届く。同区芦の口の無職佐々木直美さん(77)は「何かあったら、会から連絡が行くって息子に伝えているの。独りだけど、毎日の幸せと安心につながっている」と心待ちにする。

 同会は恵和町や若葉町などに暮らす72~88歳の主婦ら29人がボランティアで運営。市から借りた若葉町の空き家を拠点に、買い出し、調理、宅配の全てを担う。80~90代の独居高齢者を中心に太白区内の114人が利用する。

 活動は1995年9月、地域の主婦の「お茶のみ」がきっかけとなった。介護保険制度がない時代。市が在宅福祉の一環で高齢者への給食宅配を担う民間ボランティアを募集していた。

 週10食以上の宅配をすれば、若葉町の空き家を貸すとの条件。市橋さんは「家事の延長で、主婦のお茶のみ場ができるなら」と会を設立し、同じ世代の主婦ら30人が集まった。

 場所欲しさに始めた事業だが、弁当の評判は口コミで広がり、利用者は次第に増加。多いときは一回で100食分の弁当を用意した。会から会員への謝礼は時給換算で400円ほど。栄養たっぷり、彩りと季節感のある家庭の味を文字通り、手弁当で届けてきた。

 多くの担い手が80歳を超え、市橋さんは今月末での解散を決断したが、昨年9月にボランティアで加わった看護師小川彩乃さん(35)=太白区=が「30年続いたものを途絶えさせたくない」と跡を継ぐと決めた。

 小川さんの思いは、知人の管理栄養士や作業療法士ら20~40代の男女10人の仲間を新たに呼び込んだ。小川さんは訪問看護の経験もあり「介護保険の支援の網に入らない地域の高齢者を支えたい」と志す。

 今月末で70~80代の8人が引退する。頼もしい後継者が現れ、「本当にうれしい」と目を細める市橋さん。「弁当を待っている高齢者に、これからも満足できる温かい食事を届けてほしい」と話す。

化学調味料は避け、野菜をたっぷり使った弁当。家庭的で懐かしい味がする

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