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東京圏への転出超過率、なぜ宮城が全国1位? シンクタンク77R&Cが初の分析

ビルが立ち並ぶ仙台市中心部。宮城は東京圏が本社の事業者の比率が高い

 七十七リサーチ&コンサルティング(77R&C、仙台市)は、東京圏(埼玉、千葉、東京、神奈川4都県)への人口移動動向と転出要因を初めて分析した。宮城県の転出超過率は2023年から2年連続で全国1位(東京圏を除く43道府県中)となり、東京圏に本社を置く事業所が集積する「支店経済」が主な要因だと結論付けた。

 転出超過率は、転出数から転入数を引いた転出超過数を人口で割った比率。総務省の住民基本台帳の人口データを基に算出した。

 宮城県から東京圏への転出超過率の推移はグラフの通り。08年のリーマンショック以降は職を求めて東京圏への移動が増えた一方、東日本大震災後は復興需要に伴って転入の動きが加速した。

 コロナ禍で人口移動は縮小したものの、徐々に転出が増え、転出超過率は21年が0・21%と全国1位になった。22年は3位だったが、23年0・28%、24年0・31%と超過幅が拡大した。

 転出超過率の要因は、雇用や所得、産業構造、大学進学などを表す七つの指標を採用して分析。宮城は東京圏が本社の事業者の比率が高く、転出超過率を引き上げる最大の要因になっていることが分かった。

 東京圏に本社を置く事業者の比率について、仙台市は16・9%を占め、東京圏を除く道府県庁所在地で1位。支店の集積は大企業の県内での認知度を高めるだけではなく、大企業への依存傾向が強まり地方企業が育ちにくく、東京圏への就職を促しているとみられる。

 宮城の転出超過率の要因を年代別にみると、15~19歳は大学進学の影響が大きく、20~24歳は県内の大学を卒業した東京圏出身者が戻る「逆Uターン」現象がうかがえる。宮城と東京圏との距離の近さが、各年代に共通して転出理由の要素となっている。

 77R&Cは43道府県の転出超過率も公表した。東北6県の24年の転出超過率、全国順位、主な要因は図の通り。秋田を除く5県が上位10位に入った。福島は支店経済、青森、岩手、秋田、山形は大学進学が主な要因だった。

 分析した77R&Cの大川口信一研究顧問は「東北から宮城に人を集め、東京圏へ放出する人口のダム機能が顕著に表れた。地元の中堅企業を大企業へ成長させたり、スタートアップを支援したりして若年層の転出を抑える必要がある」と話した。

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