自転車盗難、後絶たず 防犯に「ツーロック」効果的
「大切にしていたロードバイクが盗まれた。盗難が頻発している現状を伝えてほしい」。仙台市泉区の男子学生(21)から「読者とともに 特別報道室」に憤りの声が届いた。宮城県全体で自転車盗の認知件数は減る傾向にあるものの、鍵を壊されるなどして被害に遭うケースが後を絶たない。卑劣な犯行から身を守るすべを探った。
学生は2月中旬、市地下鉄泉中央駅近くの商業施設の駐輪場に自転車を止めた。翌日、出庫に向かうと、チェーン状の鍵で駐輪場のラックにくくり付けたはずの愛車は姿を消していた。
約2年前、アルバイト代を半年間ためて手にした1台だった。価格は10万円超。盗難被害に遭う1週間ほど前に、チェーンなどの部品を取り換えたばかりだった。学生は「通学に欠かせない重要な生活の足だった」と肩を落とす。
手掛かりを求めて会員制交流サイト(SNS)で情報を集め、自身の自転車がなくなった数日後に、同駅周辺でスポーツタイプの自転車の窃盗があったという投稿を見つけた。ロードバイクやクロスバイクを盗まれたという知人の話も耳にした。
宮城県警によると、県内の2019年の自転車盗認知件数(暫定)は2065件。15年比で約1300件減った。学生が被害に遭った泉署管内の19年の認知件数は142件。鍵を掛けていない自転車の盗難が多く、20年1~3月の25件のうち、無施錠が20件を占めた。
泉署の幹部は「駐輪時間が長くなりがちで、人の集まりやすい駅周辺は自転車盗が起こりやすい」と指摘。施錠を徹底するよう呼び掛けている。
◎鍵にGPS機能搭載、スマホに通知も
宮城県内で2015~18年に確認された自転車盗のうち、鍵を掛けずに被害に遭ったケースは毎年、6割を超えている。盗難を防ぐには施錠が不可欠。関係者の間では、複数の鍵を併用したり、周りの柱などの固定物と一緒にくくったりする方法が効果的とされている。
ハヤサカサイクル仙台中央店(仙台市青葉区)には、さまざまな素材や形状の鍵が並ぶ。価格や強度は多種多様。素材や形状、重さなどが異なり、それぞれ一長一短がある。
低価格で購入者が多い「ワイヤロック」は軽量で持ち運びやすい半面、工具で簡単に切られてしまう。金属製の鎖を布などで覆った「チェーンロック」は頑丈だが、重いため持ち歩くのに難がある。
金属製でU字型の「シャックルロック」は堅固な作りが特徴。タイヤと車体をくくって鍵を掛ける。別の鍵を使って固定物とつながないと、車体ごと持ち去られる恐れがある。
18年末に発売された最新機器は衛星利用測位システム(GPS)機能などを搭載。駐輪中の振動を検知すると警戒音を発し、連動するスマートフォンに通知する。本体価格に加え、月または年単位の利用料が必要で、高価な自転車の利用者に人気の商品のようだ。
同店スタッフの千葉勇太さん(31)は「乗る頻度や駐輪時間の長さなど、自転車の利用方法に応じて組み合わせを考えてほしい」と語る。県警も、二つ以上の鍵を使う「ツーロック」を推奨している。
鍵の掛け方も重要になる。自転車愛好家の間で有効とされるのが、駐輪場の支柱などに自転車をくくり付ける「地球ロック」。サドルの周りなど高い位置で掛けると効果的という。
千葉さんは「窃盗犯に狙われないよう、柱などがない場合は、駐輪場所や時間帯の固定化を避けてほしい」と話す。
(関根梢、石沢成美)