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空き家にアベノマスク 自宅と店に重複も「明らかな無駄」「急いで届けた」

配布時期が異なるためか、異なるチラシが添えられて遠藤さんの店と自宅に届いた布マスク

 新型コロナウイルスの感染防止対策として政府が全世帯に2枚ずつ配る布マスクが、居住者のいる住宅だけでなく、店舗や事務所、空き家などにも配られていたことが15日、分かった。受け取った市民は「税金の無駄遣いではないか」といぶかっている。

 仙台市青葉区の美容室に5月下旬、厚生労働省を差出人とする布マスクが届いた。約2週間後、経営者の美容師遠藤信明さん(64)が暮らす青葉区の自宅にも同じものが送られてきた。「何人家族だろうと、2枚と言っていたのに」と遠藤さんは首をかしげる。

 届いたマスクは小さく、厚みがあるため、仕事中に着けるには使い勝手が悪い。常連客を介し、子育て支援に取り組む団体に寄付することにした。

 店の客からは「経営しているアパートの空室に届いた」「ポストが共同の寮には、1棟で一つしか入っていなかった」といった声が聞かれたという。

 遠藤さんは「配ると言い出して2カ月以上かかってこれだ。多額の税金を使いながら、必要のないところに届けるのは明らかな無駄遣いだ」と指摘する。
(この記事は「読者とともに 特別報道室」に寄せられた情報を基に取材しました)

◎厚労省の説明は…

 「アベノマスク」とやゆされる政府による布マスクの配布を巡る疑問に、厚生労働省は「速やかに届けられるように努めたため」と説明する。住宅や店など同一人物のもとに複数のマスクが届いたのは、送り先を吟味できない日本郵便のポスティングサービスを使ったことが要因とみられる。

 厚労省マスク等物資対策班によると、ダイレクトメールなどに対応した日本郵便の「タウンプラス」を使い、2枚一組を配った。

 指定する地域で配達可能な全ての箇所に荷物を届けるシステムで、個人宅のほか事業所にも届くという。リストにある各住所に2枚(1通)を届ける契約で、関連予算は466億円。

 空き家のポストにも入っていたとされる点について、厚労省の担当者は「日本郵便は普段から郵便を配達している。明らかに空き家なら配らないだろう」と説明。空き家か否かを判別できない場合、投函(とうかん)する可能性があるとしている。

 また厚労省は15日、布マスクに関して「おおむね配布を完了した」と明らかにした。日本郵便への納入は12日までに終了。同社は通常なら3日程度で配布できるため、15日までに未配布だったほとんどの世帯に届いたとみられるという。

 未着の場合や不足する場合は追加で送付するとしている。連絡先は厚労省電話相談窓口(0120)551299。

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