「爆破予告」自治体の対応分かれる 仙台市は非公表 茨城・常総市は一時閉庁
仙台市が市役所の爆破予告を市民に公表せず、庁舎内の警備強化にとどめた対応に異論が出ている。無用な混乱を招かず、犯人を増長させないためと説明するが、同じ日の爆破予告を受け取った茨城県常総市は市役所を一時閉庁し、職員や来庁者を待避させた。どちらも被害はなかったが、一部の仙台市議は危機管理の在り方を疑問視する。
(報道部・高木大毅)
「18日正午に市役所本庁舎にドローンで手りゅう弾を投下する」
市ホームページ(HP)の問い合わせ欄に爆破予告が書き込まれたのは、15日土曜の正午ごろ。予告は「その後、市内の駅のどこか1カ所でホスゲン(有毒ガス)をまく」「地下鉄南北線の車両のどれかをスマホ型の爆弾で爆破する」などと続いた。
週明けの17日に職員が気付き、宮城県警に相談。市は全部局に文書で警戒を呼び掛け、警備員の巡回を強化したが、予告された18日に庁舎の閉鎖や地下鉄の運休などは行わなかった。
来庁者を含め市民への情報提供もゼロ。爆破予告が届いていたことは、河北新報の記事などでニュースとなり、市民に伝わった。
市危機管理課の原孝行課長は「警察とも相談し、爆破予告の信ぴょう性は低いと判断した。市民に公表すると、いたずらに混乱を招く可能性があった。結果的に騒動を期待する犯人を喜ばせ、模倣犯が現れる」と対応は妥当と強調する。
常総市のケースではインターネットの掲示板に「18日午後4時33分に市役所に仕掛けた爆弾が爆発する」などと書き込まれた。12日に職員が気付き、茨城県警に相談。13日に「18日午後3時に臨時閉庁する」と決め、市HPや会員制交流サイト(SNS)で市民に知らせた。
同市資産管理課の倉持敏課長は「いたずらの可能性は大きかったが、根拠なく『まあ大丈夫だろう』とするのは危険と考え、最悪の事態を想定した。市民には心配や迷惑を掛けたが、適切な判断だった」と振り返る。
同じ日の爆破予告で分かれた対応。21日の仙台市議会総務財政委員会では、一部議員から「最悪を想定し、市民の安全を確保すべきだった」「市民に情報が知らされないのはおかしい」と批判が上がった。
木村洋二危機管理監は「市民の安全が優先との前提に立って情報収集し、警察と相談の上で(非公表と)判断した」と繰り返し、議論は平行線をたどった。
◎「大きく構えるのが鉄則」「正解ない」
自治体庁舎の爆破予告は6月以降、東北でも相次いでいる。いずれも被害はなく、悪質ないたずらとみられるが、各自治体は住民への事前の情報提供なども含め、対応に苦慮している。
にかほ市には6月中旬、「市役所などに時限爆弾を仕掛けた」とメールが届いた。爆破を予告された17日は各庁舎と市有施設、市立小中学校を一時閉鎖して備えたが、被害はなかった。
いわき市役所の爆破予告は8月中旬、インターネット掲示板に書き込まれた。市は巡回を強化し、市民にはホームページ(HP)で対応状況を説明した。同じ掲示板で同時期に予告があった気仙沼市は「不安を与えてはいけない」と市民への情報提供を見送った。
石巻市役所は1階に商業施設が入る。7月下旬、市HPに爆破予告が書き込まれた。市は悩んだ末、庁舎内の警戒を強化するにとどめたが、大山健一管財課長は「万が一を考え、閉庁した場合のシミュレーションも行った」と明かした。
相次ぐ爆破予告。住民に知らせるべきか。公表するとしたら、どう知らせるべきなのか。
警視庁公安部でテロ対策を担当した危機管理コンサルタントの松丸俊彦氏は「大きく構え、小さく収めるのが危機管理の鉄則。まずは爆破予告が本物だった場合を考え、対応しなければならない」と指摘した。
高知県警本部長を務めた明治大公共政策大学院の小林良樹特任教授は「対応に正解はない。情報提供が必要かどうかは、各自治体が住民と十分にコミュニケーションを取り、判断していくしかない」と語った。
(この記事は「読者とともに 特別報道室」に寄せられた情報を基に取材しました)
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