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かんぽ不正、社員も不信感 「上司から圧力」「処分はしっぽ切り」

不適正募集の処分に関し、反省や会社への不信感を語る社員

 日本郵政傘下の日本郵便とかんぽ生命保険による保険不正販売が表面化してから1年余り。社員の処分が現在も続く。「改めて現状を取材してほしい」。東北の郵便局に勤める社員から「読者とともに 特別報道室」に声が寄せられた。話を聞いてみると、反省とともに言葉ににじんだのは会社への不信感だった。

 男性社員Aさんは6月下旬、保険業法に基づく処分を受けた。「真摯(しんし)に受け止めており、相応の処分を受ける覚悟はある」。同じく処分を受けた男性社員Bさんも「会社の指示があっても、悪いことをして処分されるのはまっとうなことだ」と話す。

 問題視されたのは、解約して新契約に加入する「乗り換え」に応じた顧客に、新旧の保険料を二重払いさせるなどの行為だった。取材に応じた社員らは「上司からの指示で行われていた」と口をそろえる。元社員の男性Cさんは「(2007年の)郵政民営化でノルマが厳しくなったことが影響した」と語る。

 「貯金と誤認させる」「資金力のある客の所に行く」。複数の証言によると、会社側からは好成績を挙げた人を例に営業の指導があった。契約の見込みがある顧客を見極めるテクニックも教えられ、特定の顧客を代わる代わる訪れた。

 契約が取れないと上司からのどう喝は当たり前。上司も、さらに上役から「契約がゼロだった社員を帰宅させていいのか」などと毎日のように電話で責められていたという。

 男性社員Dさんはこうした状況に耐えかね、数人で上司に意見した。しかし「仮登録の形でもいいから(目標額の)100%を計上しろ」と、逆に圧力をかけられた。

 日本郵政はこれまで郵便局長ら管理者について236人を懲戒処分した。停職1人が最も重く、残りは戒告以下。一方、603人の募集人(営業担当者)に対する処分は懲戒解雇15人、停職8人、減給182人などとなった。

 男性社員Eさんは「このままでは『しっぽ切り』で終わってしまう」と憤る。Cさんは「上司のパワーハラスメントもあったのに、最前線が悪いとされている」と疑問を口にする。

 社員の処分に関し日本郵便調査・広報部は「募集人に対しては、かんぽ生命の調査結果のほか経緯を書面で提出させ、内容を精査した上で検討している」と説明。管理者については「パワハラの指摘は必要な調査を行った上で厳正に措置している」という。

 調査で不適正募集と判定された契約については、支給済みの営業手当の返納を求められる。営業活動の自粛が続き、基本給と営業手当から成る給料は手取りで月十数万円に目減りした。返納は月数万~数十万円で、総額300万円を超えた人もいる。Aさんは「生活に苦しむ社員も多い」と訴える。

 判定にも不満がある。転勤などで自身の顧客を引き継いだ後任が不正をした場合、元の契約にさかのぼって「不適正」と見なされるという。複数の社員は「適正な方法で契約したものまで返納を求められている。聞き取りもなく処分されている」と会社側への不信感を隠さない。

 日本郵政は8月、時期は未定ながら営業活動の再開を発表。当初は顧客へのおわびが中心になる。元社員Cさんは「保険の募集活動をしても、犯罪者のように見られてしまうのではないか」と懸念する。

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