涌谷保育園パワハラ問題 保育士ら17人が再び退職届 「撤回後も被害」訴え
涌谷保育園(宮城県涌谷町)を運営する町内の社会福祉法人涌谷みぎわ会理事長からパワーハラスメントを受けたとして、同園勤務の保育士ら職員17人が、今月末日付の退職届を出した。17人は既に有給休暇を取得して休んでおり、保護者らに保育環境低下の不安が広がっている。
職員でつくる労働組合によると、退職届を出したのは保育士14人とスタッフ3人。施設管理者を兼ねる理事長によるパワーハラスメントを受け「精神的に疲労し、安全な保育ができなくなった」として9日に提出し、17日から休んでいる。
園ではこれまで約20人の保育士が116人の園児を保育してきた。17日以降、園側は別の保育士を採用し、1日12~15人の保育士での合同保育に切り替えた。しかし、園の規模では最低でも保育士17人が必要とされ、認可保育園の設置基準を満たしていない。
園児の保護者は20日夜に臨時総会を開催。「園から納得いく説明がない」「子どもが懐いた先生がいなくなり、心配だ」などの意見が出、園側に保護者説明会の開催を求めている。
県子育て社会推進室は保育士不足を認めた上で、園側の緊急対応により「保育環境は継続されている」と認識。12月以降の保育士確保を指導している。町の担当者は「法人の労使交渉に介入できないが、保育環境が維持できるように対応している」と話す。
理事長は2015年4月に園長として就任以降、保育士を怒鳴ったり、特定の職員を無視したりする行為を繰り返したとされる。退職届を出した職員の多くは3月にも届けを出したが、理事長との団体交渉の末、撤回。理事長はその後に園長を辞し、施設管理者として園にとどまっている。
労組委員長の女性保育士は「春以降も嫌がらせが続き、我慢も限界。園児と離れるのはつらいが、理事長が代わらない限り、改善は見込めない」と訴える。精神的被害を受けたとして、組合から理事長への損害賠償請求も検討する。
理事長は「取材に対応できない」としている。