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津波の跡で 災害危険区域3167㌶―10年後の風景(中) 半島部 活路が「広場」

整備が進む北上地区の健康づくりパーク予定地とその周辺

 石巻市北上地区の北上川沿いに広がる災害危険区域で、整地が進む広々とした土地がある。公共施設が集まる「にっこり地区拠点エリア」近くの追波地区。東日本大震災前に73世帯が暮らしていた集落跡の一部が、住民の憩いの場に生まれ変わろうとしている。

 市が被災跡地2・2ヘクタールを活用して整備するのは、パークゴルフが楽しめる「健康づくりパーク」。芝生敷きの広場に18ホールのコースを設け、住民のコミュニティーづくりや健康増進に役立ててもらう。利用は無料で、住民が自由に使える施設にする計画だ。

<関心高まらず>

 10月の開園を目指して工事が進むが、地元の関心が高まっているとは言えない。追波行政区長と集団移転先のにっこり団地の自治会長を兼任する千葉宏一さん(74)は「北上でパークゴルフをする人を知らない。どれだけの人が利用するだろうか」と首をかしげる。

 健康づくりパークは、半島部に広がる被災跡地の一体的な活用策として市が打ち出した。北上のほか雄勝、牡鹿の各地区中心部と、渡波地区で被災した渡波中・石巻女子商高跡地で整備を計画する。4地区の計画面積は計9・7ヘクタールに上る。

 土地区画整理事業などで面的整備が可能な市街地の被災跡地は、多くの自治体が産業用地に活用する。石巻市も中心部に近い上釜、下釜、湊西の各地区に計約100ヘクタールを整備した。企業誘致の受け皿は既に十分で、半島部は物流や雇用面でも条件が厳しい。市は産業化を目指して「北限のオリーブ」の実証栽培を離半島部4地区で進めるなど、広場や農地に活路を探る。

<供給過多指摘>

 ただ、健康づくりパークは河北、水明両地区の河川敷にも整備を計画する。市内には河南、桃生両地区にパークゴルフ場があり、近隣の東松島市や登米市豊里地区にもプレーできる場がある。パークゴルフ施設としては供給過多になるとの指摘もある。

 整備を担当する市包括ケア推進室は「競技場ではなく、パークゴルフもできる芝生広場。散歩やボール遊び、ラジオ体操など幅広く使ってほしい」と説明する。

 広場の維持管理も課題の一つだ。市は地元団体やパークゴルフの愛好者グループなどに管理を委託する方針だが、半島部は人口減少や高齢化で担い手が限られる。市から委託の打診を受けた千葉さんは「自治会は団地内の公園の管理もある。新しい広場まで手が回るだろうか」と不安を抱く。

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