社説(4/14):デジタル改革法案/懸念残る 個人情報の保護

 時代遅れな文書主義、はんこ主義を見直し、行政を抜本的に効率化するのが主な目的かと思っていたら、どうも違うらしい。実は政府や企業が個人情報を含むデータを簡単に利用できるようにするのが狙いではないか。

 衆院の審議で課題が明らかになるにつれ、そんな疑いが強まってきた。国民のプライバシー保護が置き去りにされることを強く懸念する。

 デジタル庁の創設を柱とする「デジタル改革関連法案」。既に衆院を通過し、参院ではきょう本会議で審議入りする予定だ。

 関連法案は、9月にデジタル庁を発足させる設置法案などの新法案5本と個人情報保護法などの改正案の計約60本から成る「束ね法案」。デジタル庁を司令塔に、国と地方が集めた個人データを一元的に管理し、行政の効率化を図る一方、民間企業によるデータ活用を促し、新産業の創出も目指すという。菅義偉政権が掲げる看板政策だ。

 きっかけになったのは、新型コロナウイルス対策で国民に一律10万円を配る特別給付金などの支給を巡り、オンラインでの申請が大混乱したことだ。押印を必要とする行政手続きもテレワークの普及を阻害し、働き方改革に逆行すると批判された。

 デジタル化で行政の効率化とサービス向上が図れるなら結構な話だが、歓迎しがたい内容も含まれる。

 個人情報保護法改正案は国や自治体、企業ごとに異なる保護ルールを一本化することが柱だ。政府は官民のデータ共有が容易になり、災害対策などに生かせると利点を強調するが、自治体などからは、情報漏えいのリスクが高まるとの指摘が相次ぐ。

 個人情報の保護については住民に近い自治体が国に先行してルールを作ってきた。特に人種や思想・信条、病歴などの「要配慮個人情報」については、9割以上の自治体が収集、記録をそれぞれの条例で規制し、多くの場合、収集自体を原則禁止している。

 一方、国のルールは、行政機関や事業者の間でのデータのやりとりや連携の推進を意図しているだけに、規律は比較的緩やかにならざるを得ない。国の規制に一元化されることで、個人情報の取り扱われ方はこれまでと大きく変わる可能性がある。

 産業界や政府、与党内ではビッグデータのビジネス活用を進める上で、現行の個人情報規制が障害になっているとの議論が以前からあった。関連法案の一つ、デジタル社会形成基本法案には「国際競争力」の文字も躍る。

 データエコノミーで世界の先頭を走る中国の例を持ち出すまでもなく、国による個人データの集約は国民の監視統制につながる危険が常につきまとう。参院の審議では、個人情報の保護や乱用を防ぐ具体的な仕組みを重点に、徹底した議論を期待したい。

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