社説(4/15):日米首脳会談/対中戦略 共有が不可欠だ

 強固な同盟関係を確認した上で、安全保障や経済連携、気候変動などの分野で具体的な成果を示せるかどうか。両国の異なる対中戦略を綿密にすり合わせ、実行可能な役割について認識を共有することが重要だろう。

 菅義偉首相は16日、バイデン米大統領との会談に臨む。ホワイトハウスに迎えられ、対面で会談する初の外国首脳となる。「唯一の競争相手」と位置付ける中国への対抗上、日本に寄せる期待の大きさが伝わってくる。

 中国との競合を「民主主義対専制主義の闘い」とみなすバイデン政権は、通商交渉には強い関心を示さない半面、同盟国と協調しながら、人権問題や環境保護を前面に「中国包囲網」の構築を目指す。

 同盟関係をあまり重視しなかったトランプ前政権以上に、日本に大きな貢献を求めているとみて間違いない。

 安全保障では、民主主義や法の支配を重視する「自由で開かれたインド太平洋」を実現する方針を確認。台湾海峡や東・南シナ海で軍事的な活動を強化している中国への対応が最大テーマとなる。

 経済連携では、米国が主導する半導体やレアアース(希土類)、医薬品などのサプライチェーン(調達・供給網)の多角化に日本が協力し、中国依存から脱却する方策を探ることになる。

 首相自身が「首脳会談で大きなテーマになる」と語る気候変動も、温室効果ガス排出大国の中国がターゲット。日米両国が2050年までに排出をゼロにする目標に一致して取り組む姿勢を示し、国際的な圧力を増幅させたい考えだ。

 一方、最も強く中国を刺激しそうなのが人権問題への対応だ。日本政府関係者によると、会談の成果として安全保障、気候変動、経済協力-の各分野で共同文書の発出を予定しており、香港や新疆ウイグル自治区での人権状況悪化に「深刻な懸念」を示すという。中国の反発は必至だ。

 日本経済はコロナ禍からの回復が早かった中国への輸出の伸びによって支えられている。ウイグル問題で日本は先進7カ国(G7)で唯一、中国への制裁に加わっていないだけに、人権問題で日米の温度差が露呈する恐れもある。

 中国に付け入る隙を与えれば、「包囲網」はアジア地域からほころび、自由で開かれた国際秩序は遠のく。

 まずは力による現状変更や人権の抑圧を絶対に認めないとの基本認識を米国とともに毅然(きぜん)と示すことが第一だが、同盟国ではあっても、過剰な追従は国益を損なう。

 副作用として増大する中国やロシアとの摩擦には、東南アジア諸国連合(ASEAN)など多様なチャンネルから現実的な対応も迫られよう。

 「新冷戦」とも言われる米中関係の下での菅外交は、会談後こそがスタートラインと考えるべきだろう。

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