社説(5/1):東京五輪 無観客開催も/国民の理解得られる結論を

 今夏の東京五輪・パラリンピックについて、大会組織委員会の橋本聖子会長が、無観客での開催を視野に入れていることを明らかにした。

 新型コロナウイルスの感染が拡大する中、医療負担に配慮することで、開催への国民の理解を得る最後の選択肢とも言える。大会関係者向けの感染防止策「プレーブック」も更新し、より厳格な姿勢を強調。「安全安心な大会」を訴えるが、無観客による医療負担軽減効果などの具体的な数字は見えない。国民の理解を得られるかどうかは、まだ難しいと言わざるを得ない。

 4月28日、国際オリンピック委員会(IOC)、国際パラリンピック委員会(IPC)と組織委、東京都、日本政府による5者協議が開かれた。3月の協議では海外観客の受け入れ断念で合意。今回は観客数の上限を決めることになっていたが、6月に先送りされ、その時点での国内の観客上限に準じることにした。

 協議で、観客上限の「選択肢に触れることはなかった」(丸川珠代五輪相)が、会見で橋本会長は「ぎりぎりの判断として無観客という覚悟を持っている」と表明した。

 変異株による感染拡大で医療が逼迫(ひっぱく)し、政府は東京都などに3度目の緊急事態宣言を出した。宣言地域内でのプロ野球やプロサッカーJリーグは無観客となっている。

 橋本会長は「状況が許せば、多くの観客に見ていただきたい」としながらも、「医療に支障を来すという状況になれば、無観客を決断しなければいけない時期が来るだろう」と判断の基準を示した。

 大会期間中、必要な医療スタッフは計1万人とされる。28日公表のプレーブック第2版では、選手らの検査回数を原則毎日とする一方、検査は簡便な唾液採取を基本とし、民間に委託するなどの対応を示した。ただ、具体的な検査件数、必要な医師の数などは「結論が出ていない」(組織委)といい、負担減がどの程度になるのかも未知数だ。

 「再延期」について、組織委の武藤敏郎事務総長は「組織的な観点から議論したことはない」としながらも、(1)2022年に北京冬季五輪、24年にパリ夏季五輪があり、それぞれ準備が進む(2)選手のモチベーションの維持(3)選手村が民間開発計画の一環で、確保が困難-を理由に挙げて否定的な見解を示した。

 大会開催の可否を決定する権限を持つのはIOCだ。それでも、中止を求める国内世論は根強い。無観客は開催意義が問われ、中止論を勢いづかせる可能性もある。900億円と見込んでいたチケット収入はなくなり、負担の在り方が問われる。もちろん、中止なら負担はさらに膨らむ。

 通常開催が絶望的な中、どの選択肢もリスクを抱える。開幕まで3カ月を切った中、国民がより納得できるように透明性を持った議論を尽くすしかないのではないか。

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