社説(4/29):原発事故 宮城への影響/地元理解を忘れず道筋探れ

 東京電力福島第1原発事故から10年が過ぎた。甚大な被害は宮城県内にも及び、1次産業の現場では、なお困難が続く。暗礁に乗り上げている問題も多く、事故の重大さと理不尽さを改めて感じずにはいられない。
 放射性物質で汚染された廃棄物の処理は停滞している。
 国の基準(1キログラム当たり8000ベクレル)以下の「汚染廃棄物」は一般ごみと同様の処理ができるとされ、市町村が担う。県内の処理方法は保管する自治体が地元圏域ごとに処理を進め、焼却か、すき込みなどの農林地還元に当たる。
 汚染廃の県内推定保管量が約3万6045トンなのに対し、処理量は19%の6743トンにとどまる。26市町村の半数以上の15市町村で、いまだに処理が完了していない。
 県内で保管量が最も多い加美町は汚染牧草4094トンのうち、400ベクレル以下の1153トンを町有地にすき込む予定だが、住民説明会で反対が相次ぎ、実施できていない。保管を迫られる畜産農家の間では風評に悩むケースも出ている。
 一方、8000ベクレル超の指定廃棄物は国が長期管理し、発生した都道府県内で処理する。各地に「一時保管」を求めており、県内の推計量は3413トンに上る。国は最終処分場を1カ所設ける方針を打ち出し、2014年1月に栗原、大和、加美の3市町を候補地に挙げた。だが地元の猛反発を浴び、事実上の白紙撤回に追い込まれた。
 放射性廃棄物をテーマにした市町村長会議は17年7月の開催を最後に開かれていない。県は協議を再開したい考えだが、事態打開の道は容易ではない。
 過酷事故の影響は浜にも及ぶ。代表格が県産ホヤだ。韓国が13年9月から7年半以上たつ今も禁輸措置を継続中。事故の影響で販路の7割が絶たれたという。
 東日本大震災前の7000~1万トンには届かないものの、県内のホヤ生産量は14年に4069トンで全国トップに返り咲いた。しかし、16年に禁輸措置の影響が表面化。生産過剰となり、県漁協(石巻市)は約7600トンの焼却を強いられた。廃業やワカメ養殖などへの転換を選んだ漁業者も少なくない。県産の代わりに韓国の市場には北海道産が出回り、19年の県生産量は首位から再び陥落した。
 山の幸にも影を落とす。県内で出荷制限がかかる農林水産物は3月末現在、キノコや山菜を中心に13品目に及ぶ。一方的に難題を背負わされた形で苦悩する生産者は多い。
 廃棄物や農林水産物への影響にみられる一連の問題は長期対応を強いられる原発事故の根深さを映し出す。解決や状況改善には国や県の主導的な役割が欠かせないが、地元の理解を得ないまま結論を導くようなことがあってはならない。対話の姿勢を忘れずに道筋を探ってほしい。

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