社説(5/21):医療的ケア児法案/学びの確保 十分な支援を

 医療の進歩によって、かつては救えなかった乳幼児の命が救えるようになった半面、新生児集中治療室(NICU)を退院後も、人工呼吸器の管理やたんの吸引といった医療的ケアが日常的に欠かせない子どもが増えている。

 十分な支援を得られず、保育施設や学校に通うことを断念したり、看護のために親が離職せざるを得なくなったりするケースも少なくない。

 こうした「医療的ケア児」と呼ばれる子どもと家族への支援を強化する法案が今国会に提出される見通しだ。「学ぶ権利」と「働く権利」が制約なく保障され、子どもの成長を温かく見守る社会づくりにつなげていきたい。

 厚生労働省の推計(2019年)によると、医療的ケア児は全国で約2万人。過去10年で約2倍に増えているという。体を動かせない重症心身障害児(重症児)から自力で歩ける子どもまで状況はさまざまで、必要とされるケアも胃ろうや人工呼吸器の使用、気管切開部の管理など、それぞれに異なる。

 法案は、自民、立憲民主など超党派の国会議員らでつくる「永田町子ども未来会議」が提出。医療的ケア児の母親でもある自民党の野田聖子幹事長代行らがまとめた。

 こどもの「健やかな成長」と「家族の離職防止」を目的に据え、医療的ケア児の支援を「国および地方公共団体の責務」と位置付けた。保育所や学校などの設置者には、適切なケアを行える看護師らの配置など「必要な措置」を講じるよう求めている。

 家族の相談に対応して情報提供や助言に当たる「医療的ケア児支援センター」を各都道府県に設置することも盛り込んだ。

 医療的ケア児は2016年の児童福祉法改正で初めて法律に明記され、支援体制を整えることが自治体の「努力義務」となった。しかし、現状では特別支援学校に通学する場合でも、医療的ケアに「対応できない」と判断され、親が付き添いを求められることが少なくない。

 医療的ケアは、看護師のほか、研修を受けた保育士や教員にも認められているが、教育現場の過重労働が問題となる中、ケアを担える教員の養成は足踏み状態。看護師の配置も必ずしも十分でなく、地域によって大きな格差が生じている。

 今回の法案は支援強化に向けた機運を高める理念法で、具体的な規制や罰則はない。医療的ケア児と家族が直面する課題はそれぞれ異なることから、状況が改善するには、なお時間がかかるだろう。

 それでも、多様性が尊重される社会は、障害の有無にかかわらず共に学ぶ場から育っていくに違いない。まずは個々のケースに応じて子どもたちに学びの機会を確保し、家族の負担を軽減する取り組みを国と自治体が連携して積み上げていく必要がある。

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