<東北の本棚>被災地取材 苦闘の記録

災害特派員 三浦 英之 著
 東日本大震災被災地に住み、現地駐在となった新聞記者が震災10年を機に手記をまとめた。無数の命が突然失われた未曽有の災害現場で、記者は住民とどのように向き合えばいいのか。そんな自問を続けた苦闘の記録だ。
 2011年3月13日、著者は宮城県南三陸町に入った。がれきの中、幼子を亡くした母を取材しようとして激しく拒絶され、遺体を捜索している男たちにカメラを向けようとして激しく詰め寄られる。経験のない苦しい取材は約20日間続いた。
 南三陸町に戻ったのはその年の5月。ホテルの一室を1年間借りた。取材する側とされる側。この溝を浅くするためにまず取った行動は、地域の集会所で朝のラジオ体操に加わることだった。町に溶け込んでいく中で、ある家族と出会う。そして、壮絶な被災体験と向き合うことになる。
 現地で活動する地元記者とも交流した。町にあった支局を津波で流された後も取材を続け、16年に病気で死去した河北新報社の渡辺龍記者との思い出で、本書を締めくくっている。
 著者は1974年、神奈川県生まれ。朝日新聞社記者、ルポライター。「五色の虹 満州建国大学卒業生たちの戦後」で開高健ノンフィクション賞受賞。(安)

 朝日新聞出版03(5540)7793=1870円。

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東北の本棚

「東北の本棚」は、地元にゆかりの深い著者の本、東北を舞台にした本などを紹介するコーナーです。小説、評論、ルポルタージュ、写真集、絵本など、さまざまな本を厳選して生活文化部の記者が紹介します。


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