社説(6/2):成人年齢引き下げ/消費者被害の追加対策急げ

 成人年齢が2022年4月1日、18歳に引き下げられる。20歳を迎えることで認められてきた多くの契約行為が18歳からできるようになる。一方、消費者被害を防ぐための法整備は十分とは言い難い。高校生らが悪徳商法の標的にならぬよう、あと10カ月で実効性のある対策をさらに積み上げたい。

 1876(明治9)年以来、20歳以上を大人としてきた定義を変える改正民法は2018年6月に成立した。18、19歳の自己決定権を尊重し、積極的な社会参加を後押しする点で歴史的な大変革となる。

 おさらいをすると、18歳になれば親の同意なしにクレジットカードを作ったり、自動車購入に向けてローンを組んだりすることが可能になる。携帯電話を購入し、1人暮らしのためにアパートを借りる契約を結ぶこともできる。

 裏返せば、親権に服さなくなる年齢に達したという側面も持つ。未成年者には、親の同意を得ずに結んだ契約は原則、取り消すことができる「未成年者取消権」がある。改正法の施行で、18、19歳の若年成人は当然ながらこの権利を失うことになる。

 改正法の成立後、3年9カ月余りに及ぶ準備期間が設けられた理由は大きく二つある。一つは若者に加え、親権者ら多くの国民に影響を与えること。趣意は、もう一つの方だ。消費者被害の防止に向けた対策、周知に時間を要するとの懸念があったからにほかならない。

 参院法務委員会は改正法の本会議採決を前に、付帯決議を採択した。(1)「つけ込み型不当勧誘取消権」の創設など2年以内の法整備(2)マルチ商法への対策(3)消費者教育の充実(4)18、19歳に対する被害防止策の周知徹底-などが盛り込まれた。

 成人年齢の引き下げを09年に答申した法制審議会(法相の諮問機関)は併せて、消費者被害拡大の解決に資する施策の必要性を指摘した。小欄でも、たびたび「社会全体で若者の自立を支える仕組みをつくるのが先決だ」「若者を対象にした消費者教育の充実を」と警鐘を鳴らしてきた。

 しかし、現時点では消費者契約法上、一部の取引類型への取消権しか整備されていない。新型コロナウイルスの感染拡大で、教育現場では授業や催事の日程が乱れ、充実した消費者教育が実践されているかどうか疑問が残る。

 日弁連は4月下旬、「必要不可欠な『つけ込み型不当勧誘取消権』創設のめどは立っていない。実践的な消費者教育も全国的に、十分に行われているとは言えない」として、実効性ある施策の実現を求める会長声明を出した。

 18、19歳の自己決定権の拡大は、契約行為の重要性や危険性、責任の重さを理解した上での措置でなければならない。若年成人にリスクを背負わせ、結果として禍根を残す事態だけは避けたい。

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