デスク日誌(6/10):海辺

 自由に出掛けて、人に話を聞く。ものすごく大ざっぱに言うと、そんな日々を送りたくて新聞記者を志したような気がする。
 でも今の仕事で、外出するのは昼食を買う時ぐらい。総局の建物にずっと居るので、視線の行き先は半径数メートル程度。同僚の原稿や写真に目を通し、現場の様子をあれこれ想像するのは悪くないのだが、やっぱり外の空気を吸いたくてむずむずしてくる。
 5月下旬の週末、陸前高田市から洋野町まで岩手県沿岸を北上した。車をゆっくり走らせながら、新聞に掲載された土地や施設、浜を行き当たりばったり訪ねた。高台から眺めたリアス海岸はとても美しく、心が洗われた。
 洋野町の漁港近くには、昭和三陸津波(1933年)の犠牲者を追悼する大きな慰霊碑が防潮堤と向かい合って立っていた。「想(おも)へ 惨禍の三月三日」と刻まれている。住民は発生翌年から欠かさず襲来の日に慰霊祭を開いてきたという。
 洋野は東日本大震災の被災3県の沿岸市町村で唯一、犠牲者がいなかった。過去の教訓を伝え続け、次に備えることの大切さを教えてくれる碑だった。(盛岡総局長 今野忠憲)

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