<ヤングケアラー 東北の現場から> (下)家族に過度の負担 「介護の社会化」理念遠く

 「息子もヤングケアラーに当たるのではと考えた」

 ヤングケアラーに関する国の実態調査結果が公表された直後の4月15日。参院文教科学委員会で質問に立った立憲民主党の横沢高徳氏(岩手選挙区)が、率直に思いを口にした。

 横沢氏は1997年、けがで歩行が困難になって以来、車いす生活を送る。2人の息子が坂道で車いすを押したり、階段の上り下りを手伝うなどしている。

 政府を挙げた取り組みを求める横沢氏に、萩生田光一文部科学相は「(ヤングケアラー)本人に自覚がない場合も多い。実態把握が重要だ」と答えた。

 見過ごされてきたヤングケアラーへの関心が全国で高まりつつある。調査や支援に動きだす自治体も出てきた(表1)。

 秋田県は本年度、ヤングケアラーを含めた家族介護者の現状や課題を共有するためのセミナーを開く。新潟県はヤングケアラーの支援普及啓発事業を初めて予算化し、有識者会議の設置と県独自の実態調査も予定する。

 文科、厚生労働両省が5月17日に公表した支援策に関する報告書の概要は表2の通り。政府が6月中にも策定する経済財政の運営指針「骨太の方針」への反映を目指している。

 ヤングケアラーに関する論文執筆や聞き取り調査の経験がある仙台市の臨床心理士奥山滋樹さん(36)は「当事者や経験者、研究者の声をおおむね網羅した内容だ」と報告書を評価。その上で「各現場の熱意任せにならないよう、ヤングケアラーの定義や支援の必要性を法制化すべきだ」と注文を付ける。

 報告書では、子どもが家族の世話を引き受けざるを得ない背景への言及は乏しい。

 2000年に始まった介護保険制度は、妻や母といった女性が主に担ってきた家族による介護を社会で支える「介護の社会化」を理念に掲げた。だが、20年たった今も、家族は過度とも言える介護負担を抱えているのが実情だ。

 奥山さんは「介護や介助が必要な人が増える一方、一人親や共働きの増加などで、家族が支え合う力は弱まっている。家族の負担が前提の介護制度を見直さないまま支援を打ち出すだけでは、子どもたちへのしわ寄せは今後も続く」と警鐘を鳴らす。

 家族が家族の世話をすることは当然なのか、家族と介護の共存には何が必要なのか-。ヤングケアラーの存在が私たちに改めて問い掛けている。

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