社説(8/27):「緊急事態」指標見直し/ピークアウトが大前提だ

 スタートした後にゴールを動かすのは禁じ手ではないか。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言の発令・解除基準について、政府が検討している見直しは混乱を招き、恣意(しい)的な方針転換との批判を受けかねない。

 現在出されている宣言に適用すれば、発令と解除の可否を異なる尺度で判断することになる。

 政府は宣言の発令や解除の判断に際し、目安とした指標は(1)医療の逼迫(ひっぱく)度(2)療養者数(3)PCR検査陽性率(4)新規感染者数(5)感染経路不明の割合-の5項目だ。このうち新規感染者数を「先行指標」として重視してきた。

 見直しはワクチンの普及を支えに、新規感染者数から重症者数や病床使用率といった医療の逼迫度に重点を移す方向で検討している。

 2回接種した人の割合は全国民の4割を超え、1回目を打ち終わった人は5割を突破した。先行して接種が始まった65歳以上の高齢者は85%以上が完了した。

 ワクチンは感染を完全に遮断できないものの、発症と重症化の予防効果は着実に表れている。

 仙台市が7月1日~8月18日の新規感染者約1700人の接種歴を調べた結果、2回終えた人は60人いたが、19日時点で重症化した陽性者はいない。未接種者は約1500人で9割弱を占めた。

 一方、新規感染はピークアウトが一向に見えない。

 直近1週間で10万人当たり25人以上となる「ステージ4(感染爆発)」が宣言発令の基準だ。現状をみると、4度目の宣言が発令中の東京都は230人台で推移し、基準の9倍を上回る。宣言の対象にきょう追加された宮城県は60人台で2倍を超えている。

 感染者数を有力な判断材料にすれば、解除の見通しは当面立たない。基準見直し論の背景には、コロナ対策で有効な手を打ち出せない菅政権の焦りが見て取れよう。

 医療の逼迫度に関しても、ワクチンの重症化軽減効果を考慮しても、接種を加速し、病床を大幅に増やさなければ、早期にステージ4を脱するのは難しい。

 指標の重点項目を変えるより、むしろ40~50代の重症者数とワクチン接種率や子どもの感染者数、自宅療養者数といった項目を加えた方が、感染力の強いデルタ株の流行に即し、適切な判断が可能になるのではないか。

 宣言の常態化が緊張感を失わせ、旅行や外出の自粛呼び掛けが人流抑制に効果を上げない一因になっているのは確かだ。

 だが、感染拡大が収まる気配すら見えないのに、たとえ重症者数が減少傾向に転じたからといって、宣言解除に踏み出すのは拙速だ。

 宣言は国民の私権を制限するコロナ対策の主軸だ。見直しの可否は、国会で議論を尽くすべきだ。

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