社説(8/28):妊婦へのワクチン/優先接種 自治体は加速を

 千葉県柏市で今月中旬、新型コロナウイルスに感染した妊婦の搬送先が見つからずに自宅で早産し、赤ちゃんが死亡したことは、各方面に衝撃を与えた。

 事態を重く見た厚生労働省は妊婦や配偶者がワクチンを希望する場合は優先して接種を行うよう全国の自治体に通知した。東北の一部の市などでは動きだしており、取り組みを一層加速させてほしい。

 柏市などによると、女性は30代の経産婦で妊娠29週。1人で自宅療養していた。県と市が入院先の調整を始めたが、より症状の重い患者がいたために受け入れ先が決まらなかった。

 柏市のケースが入院先が決まらない状況で症状が悪化したことを受け、田村憲久厚労相はきのうの記者会見で、感染した妊婦を受け入れた医療機関に1日1万2000円、出産した場合は1日3万2000円の診療報酬を加算すると発表した。

 従来は糖尿病など持病がある妊婦を診療した場合の措置で、コロナ患者も対象に加える。出産した際は、前後の入院期間中も3万2000円を加算する。「医療機関がコロナ患者の妊婦に対応してもらえるよう、しっかりと診療報酬上の評価をさせてもらう」(田村厚労相)という。

 感染力の強いデルタ株の流行により若い世代が感染の中心になる中で、妊婦の感染も増加している。首都圏など感染が急拡大している地域では、重症化した場合に即座に対応できる医療機関や病床数が足りていないのが実情だ。

 診療報酬の加算は、感染した妊婦の受け入れの一助になるだろう。だが、それだけで、妊婦の受け入れ困難事例がすぐに解消できるかどうかは未知数だ。重要なのは感染した母親の重症化を防ぐことで、そのためにはワクチン接種を加速させることが最善策であることに変わりはない。

 厚労省によると、妊娠後期は特に重症化しやすく、早産のリスクも高まる。国内で承認されているワクチンに関して、妊娠や胎児、母乳、生殖器に悪影響を及ぼすとの報告はないとし、関連学会も「妊婦は時期を問わずに接種することを勧める」との提言を発表している。

 妊婦の優先接種へ向け、東北の自治体も動きだしている。天童市は妊婦とその配偶者、パートナーに優先的に接種券を発送すると発表。32歳以上の市民に接種券を発送済みだが、31歳以下でも接種を希望する妊婦らには接種券を送るという。石巻、富谷、岩沼市なども妊婦への優先接種の実施を発表している。

 少子高齢化が進む中、生まれてくる子どもたちは宝だ。芽生えた命は無事に誕生してほしい。妊婦はもちろん、出産前後の環境を考えれば、配偶者や同居家族も速やかに接種を受けてほしい。柏市のような不幸な事例を再び起こしてはならない。

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