復興拠点外、20年代に避難解除 政府決定「希望者いれば除染」

 政府は31日、復興推進会議と原子力災害対策本部の合同会合を開き、東京電力福島第1原発事故に伴う福島県内の帰還困難区域のうち、早期の住民帰還を目指す特定復興再生拠点区域(復興拠点)から外れた地域について、2020年代に希望する住民全員が戻れるよう必要箇所を除染し、避難指示を解除する方針を決めた。

 会合で菅義偉首相は「復興拠点外の自宅に帰りたいとの切実な思いをしっかり受け止め、帰還に向けて新たな一歩を踏み出すべく方針を決定した」と述べた。

 政府は今後、地元自治体と連携して住民の帰還意向の確認作業を進める。すぐに判断できない人に配慮し、確認は複数回実施する。帰還意向の状況によって除染の範囲や手法を検討し、作業に着手。除染、家屋解体などの費用は国が負担する。並行してインフラを整備し、避難指示を解除する。

 地区や集落に1人でも帰還希望者がいれば除染し、生活環境を整える方針。帰還意向のない土地や建物の取り扱いは「残された課題」とし、引き続き地元自治体と協議する。

 帰還困難区域は7市町村の約337平方キロ。うち27平方キロが復興拠点で、22、23年の避難指示解除を目標に先行して除染やインフラ整備が進む。残る区域は方針が決まっていなかった。

 内閣府によると、帰還困難区域には4月現在、2万1675人が住民登録している。うち復興拠点外は8288人。

 7市町村のうち南相馬市と飯舘村を除く浪江、双葉、大熊、富岡、葛尾の5町村でつくる協議会は今年2月、復興拠点外の具体的方針を6月までに示すよう国に要望。自民、公明両党の東日本大震災復興加速化本部は7月、希望する住民全員が20年代に帰還できるよう求める提言を政府に提出していた。

双葉町内に設置された帰還困難区域のゲート

避難住民「全域除染を」「時期が曖昧」

 福島県の帰還困難区域のうち、復興拠点から外れた地域の避難指示解除を進める政府の方針決定に、避難を続ける住民からは疑問や懸念の声が相次いだ。

 「避難指示が解除されれば帰りたい。生まれ育った場所だ」。福島県大熊町議の島原健二郎さん(71)は強調した。避難先の会津若松市で新たな人間関係を築いても、古里への愛着は薄まらなかった。

 政府が除染と避難解除の道筋を示したのは「帰還希望者の生活圏」にとどまり、それ以外の地区については結論を先送り。昨年国が行った調査によると、全住民の5~6割が「戻らない」と答えており、除染対象範囲は点在化する公算が大きい。島原さんは「点では除染したことにならず、帰ることはできない。同じ地区で住民同士に差がつくのも問題だ」と言う。

 「帰るかどうかによらず、全域を除染してほしい」と望むのは、富岡町からいわき市に避難中の関根弘明さん(65)。先に解除された場所と比べて不公平感も残る。2020年代という曖昧な時間軸に「高齢者が死ぬのを待っているのか」と不満をあらわにした。

 双葉町からいわき市に避難している小川貴永さん(51)は「『帰る』という当たり前のことを決めるのに10年。実現までにはさらに問題が出てくると思う」と対応の遅さを批判。かつて町内で営んでいた養蜂業について「生産の場として(安全に)使えるかどうかも分からない」と吐露した。

 内閣府によると4月現在、政府が避難指示解除を進める方針を決めた地区には、住民のいない南相馬市を除く6町村で計8288人が住民登録し、避難生活を送る。

 政府は今後行う意向調査を重視し、帰還を希望した全住民を対象にその生活圏の除染を進める考え。ただ、どれだけの住民が帰還を望むかは分からない。大熊町から会津若松市に避難中の60代女性は「うそはつけない。みんな10年で避難先に生活基盤を築いており、帰ると答える人はほとんどいないのではないか」と語った。

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