石巻で海づくり大会 節目の年、復興支援に感謝 オンラインで両陛下ご臨席
「第40回全国豊かな海づくり大会-食材王国みやぎ大会」(大会推進委員会、県実行委員会主催)が3日、石巻市で開かれた。オンラインでの天皇、皇后両陛下ご臨席の下、東日本大震災から10年の節目の年に復興が進む姿を示し、これまでの支援に対する感謝の気持ちを伝えた。式典行事は市複合文化施設(マルホンまきあーとテラス)、海上歓迎・放流行事は石巻魚市場・石巻漁港で行われた。県内での開催は初めて。
大会テーマは「よみがえる 豊かな海を 輝く未来へ」。式典には県内外からの招待客ら約200人が出席した。
新型コロナウイルスの感染状況を考慮し、天皇陛下はオンラインで出席された。「震災を乗り越え、この地で大会が開催されることは誠に意義深く、復興に向けた地域の人々のたゆみない努力と関係者の尽力に深く敬意を表します」と述べた。
村井嘉浩知事は「宮城の海はこの10年でかつての輝きを取り戻しつつある。この大会で水産業の明るい未来を描いていきたい」とあいさつ。斎藤正美石巻市長も「震災を乗り越え、着実に復興が進みつつある。今後も恩恵を与えてくれた豊かな海を守り、次の世代につなげていく努力をしていく」と決意を語った。
式典では、映像で宮城の豊かな海と復興支援に対する感謝の気持ちを表現したほか、最優秀作文、地元漁業者ら11人による海づくりメッセージの発表があった。参加者は今後も恵まれた宮城の海を守り育てる決意を新たにした。
石巻漁港では関係者らがホシガレイ、ヒラメの稚魚を前回開催地の秋田県から譲り受けたご放流台から海に放した。漁船、官公庁船による海上パレード、石巻市寄磯小児童4人による「誓いの言葉」もあった。
雄勝町伊達の黒船太鼓保存会による勇壮な太鼓の音色が漁港いっぱいに響き、サプライズ演出された航空自衛隊松島基地(東松島市)の曲技飛行チーム「ブルーインパルス」の展示飛行も大会を盛り上げた。
大会は当初は2020年9月27日の予定だったが、新型コロナの影響で1年延期された。
蛇田小・大森さん、作文朗読 環境問題への思い語る
「少し緊張はしたけれど、うまくできたと思います」
弾ける笑顔を見せたのは、市複合文化施設(マルホンまきあーとテラス)での式典行事で最優秀作文を発表した石巻市蛇田小4年の大森心結(みゆう)さん(9)。
作文は3年の時に書いた「わたしの体は海でできている」。祖父謙作さん(71)、祖母純子さん(71)の海や山、公園でのごみ拾いの様子を盛り込みながら、環境問題への思いをつづった。「おじいちゃんが未来へつなげてくれた海を今度は私がつなげていく番」と誓った。
母親の美和さん(36)は「リハーサルを含め、今日が一番良かった」と、娘の頑張りをたたえた。
「挑戦する気持ち大切」 県漁協東部支所・石森委員長が心境
県漁協石巻市東部支所の石森裕治運営委員長は、海づくりメッセージを読み上げる一人として、市複合文化施設での式典に参加した。「震災でもう漁業はできないと思った。それでも、今までやったことはなったがワカメならすぐに収穫できると考え、挑戦する道を選んだ」と当時の心境を語った。
初めは15人の生産者でスタートし、今は38人に増えたという。現状について「若い世代が多く、10年前より浜が活気づいた。チャレンジする気持ちが後継者と未来をつくる」と喜んだ。
両陛下、被災者気遣う
天皇、皇后両陛下は3日、石巻市で開かれた全国海づくり大会に合わせ、同市の「みやぎ東日本大震災津波伝承館」を画面越しに視察され、3人の被災者らと懇談した。被災状況や現在の活動について質問し、一人一人に声を掛けた。
震災で夫と営む水産加工工場が被災した木村あけみさん=石巻市=に陛下は「大変な思いをされたのではないでしょうか」と気遣い、皇后さまは保育園を併設した話を聞き「いい取り組みですね」と話し掛けた。
懇談後、木村さんは「諦めない心を持っていれば報われることが分かった。今後も精力的に活動したい」と感激した。
勇壮に海上パレード、伊達の黒船太鼓で演出
石巻魚市場であった海上歓迎行事では、地元漁船などによる海上パレードがあった。雄勝町伊達の黒船太鼓保存会の演奏の中、船が姿を現すと、参加者から拍手が湧き起こった。
沖合底引き網の「第37八興丸」や火光利用敷網の「第7快進丸」など9隻が登場。漁の種類や取れる魚などがアナウンスで紹介された。
船員らは船上から参加者に笑顔で手を振ったり、敬礼したりして、震災後に寄せられた復興支援に感謝を示した。