河北春秋(10/6):終戦から4年後の夏、打ちひしがれた国民を…

 終戦から4年後の夏、打ちひしがれた国民を熱狂させたのは、古橋広之進ら日本チームが大活躍した水泳の全米大会。五つの世界記録を樹立した。その秋には今度は学術分野の栄誉に、全国民が興奮した▼中間子理論で湯川秀樹がノーベル賞を受賞した。米コロンビア大で教授を務めていた湯川は「とかく意気の上がらなかった日本人が元気づけば、これほどうれしいことはない」と語った。敗戦の痛手が残る中での受賞にマスコミも国民も熱狂した▼当時、ノーベル賞を知る人はほとんどいなかったという。しかし、新聞は湯川の関連記事を連日のように掲載し、国民はむさぼるように読んだ。受賞は戦後復興の象徴、そして日本人の希望となった。五輪のメダルと同様に、今でもこの賞は私たちを元気づける▼ことしの物理学賞は90歳で米国籍を持つ真鍋淑郎さんらに決まった。真鍋さんはプリンストン大などで、気候変動の調査研究に長く携わり、今も研究を続けているという。温暖化の数値シミュレーションの先駆的な研究で知られる▼「ノーベル賞は敗者には与えられない」と語った著名な科学者もいる。湯川は研究の困難さを「地図のない旅」に例えた。研究は戦いだとも言われる。真鍋さんはどんな旅、どんな戦いを続けてきたのだろう。(2021・10・6)

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