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衆院選・宮城5区の選択軸、識者に聞く (2)被災者支援

 おおつき・ひでお 石巻市出身。石巻市役所で保健福祉部長、企画部長などを歴任。2010年4月に市社協事務局長兼常務理事に就き、震災後は災害ボランティアセンターの運営など被災者支援に尽力した。15年に会長に就任し、今年6月まで3期6年務めた。

■石巻市社会福祉協議会前会長
 大槻英夫氏(71)

<ソフト面の復興、道半ば>

-東日本大震災の発生から10年がたった石巻で、福祉の現場はどのような課題を抱えているか。

 「震災後の多くの支援や市民の努力もあり、インフラの整備は震災前と比べても進んでいる。一方、ソフト面の復興に対する支援はまだまだ必要だ。被災者の心のケアをはじめ、コミュニティーの再構築、少子高齢化による人口減少も大きな課題だ」

-市内では昨年、プレハブ仮設住宅から最後の入居者が転居し、生活の場は災害公営住宅や自力再建した住宅に移った。

 「社協は災害公営住宅の入居者を見守る『地域生活支援員』事業を市から受託している。震災直後は約170人を雇用していたが、復興のステージが移行するのに合わせて減少し、現在は約20人になった」

 「生活の様子が見えやすい仮設住宅と違い、マンションのような災害公営住宅では入居者の生活実態の把握が難しい。高齢者の独り暮らしの場合、孤独死の恐れもある。自力で片付けられないほどごみをためてしまった人や、交流の場が全くなくなって困っている人からの相談もあった。支援員制度は継続が必要だ」

-国の復興・創生期間が前年度末で終了した。福祉の現場に対する国の支援は適切だったか。

 「多くの補助金や交付金が用意された。民間企業やボランティアからの支援も厚く、震災直後の災害ボランティアセンターの運営から現在まで活動を続けることができた」

 「一方で、阪神・淡路大震災の被災地では、発災から26年がたった今でも現在の東北と同様、被災者ケアの問題が尾を引いている。東日本大震災の被災地はまだ10年。今後の20年、30年を見据えてソフト面での支援を継続しなければならない」

-被災者の心のケアとは、具体的に何が必要と考える。

 「地域の茶話会といったサロン活動に地域福祉コーディネーターが出向いたり、補助金を出したりして、住民同士の顔合わせを促す。小さいグループを大事にしながら、町内会などの自治会活動につなげ、広げていく必要がある」

-政治に求めることは。

 「地方自治の原点を見つめ、コミュニティー支援を国を挙げてバックアップしてほしい。地域に足を運び、実情を理解し、声を吸い上げてほしい」

(聞き手は漢人薫平)

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