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衆院選・宮城5区の選択軸、識者に聞く (4・完)子育て支援

 たから・すずこ 石巻市出身。宮城教育大卒。同市の小学校を中心に34年間教員を務め、56歳で退職。2012年に任意団体「放課後こどもクラブBremen」を設立。18年にNPO法人化した。働く保護者と児童を支援する活動に取り組む。

■放課後こどもクラブBremen理事長
 宝 鈴子氏(66)

<学力向上へ貧困解消を>

-衆院選では子育て環境の改善など少子化対策にも注目が集まる。子育て世帯や教育環境の現状は。

 「日本は先進国の中で教育にかける予算が少ないと言われている。高度成長期は学歴が収入に跳ね返る仕組みがあったが、今は高学歴でも収入が保証されず、学習意欲が落ちている」

 「本年度の全国学力調査で、小学生の仙台市を除く県平均の算数の正答率は全国最下位、国語は43位だった。石巻市はその県平均にも及ばない。学力テストは一面しか見ないものだが、官公庁や企業への就労がテストで決まる仕組みは変わっていない」

-学力低下の要因は。

 「学校での対策には限界がある。家庭学習の時間が必要だが、貧困家庭では確保が難しい。ひとり親の母親はパートが多く、過酷労働なのに低賃金の場合もある。仕事から帰って家事をしながら勉強を見る時間がどこにあるのか。女性が育児を任されるためパート労働になる。根っこには性差別と労働差別もある」

-東日本大震災が石巻地方の子どもたちの成育環境に与えている影響は。

 「震災でたくさんの企業がつぶれ、海産物の販路や市場が減った。基幹産業が疲弊し、新型コロナウイルスが追い打ちを掛けて観光業も振るわない。そういう状況下で、親たち、ひとり親の母親が働ける場所は限られる。親の貧困は子どもの育成に負の影響を及ぼし、十分なケアがないと世代を超えて連鎖してしまう」

 「石巻市が2019年に実施した子どもの生活実態調査では、貧困世帯の子は不登校の割合が一般世帯より高いなど、家庭の状況が子どもの生活に色濃く反映されているのが分かる」

-放課後こどもクラブBremen(ブレーメン)では学習の時間も設けている。

 「学力の低下を肌で感じた。クラブの先生たちは子どもたちのために協力してくれている。石巻市の補助金や企業の助成金などを使いながらぎりぎりで運営している」

 -子育て環境の向上に必要な支援、政策は。

 「国が日本の子ども全体の育成を保証する体制にならないと、働く親が救われず、学力低下も止まらない。国が責任を持ってお金を出し、支援の地域格差をなくして子どもがうまく育つよう応援してほしい。賃金を上げる政策や、同一労働同一賃金の実現も必要だ」

(聞き手は及川智子)

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