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衆院選・宮城5区 震災とコロナ、災禍の中で(下) 経済再生と感染対策

徹底した感染対策を講じた店内で、来店客を待つ阿部さん

<企業努力、やり尽くした>

 県内でも新型コロナウイルス感染症の広がりが沈静化しているが、経済活動再開の動きは鈍い。石巻地方の飲食、宿泊事業者らは経済再生を渇望しながら、「第6波」への不安も抱え、葛藤する。

 「何でもやるから、答えがあるなら教えてほしい」。石巻市新成1丁目の居酒屋「味彩絆本店」の店主阿部光伸さん(52)が嘆息する。店の感染対策に約200万円を投じたが、一度遠ざかった客足が戻る気配はない。

 接触感染を避けるためふたが自動開閉するトイレに交換し、換気設備も改良した。テーブル当たりの席数を半分に減らすなどし、県の独自認証も取得した。しかし、平日の客数はコロナ禍前の約2割、週末も5割に満たないのが現状だ。

 東日本大震災の津波で、市中心部で経営していた店舗が被災。約5000万円を借り入れて現在地に移転、再建したが、数年後に予定していた完済を待たずに2度目の災禍が襲った。「借金は震災の時とほぼ同じ額になった。もう昨年借りた分の返済も始まっている」。同市立町2丁目の姉妹店は今年5月に閉店を余儀なくされた。

 感染が収束しても、外食需要が簡単に回復するとは思えない。阿部さんは「企業努力はやり尽くした。起爆剤になる大規模な施策を国に打ち出してほしい」と訴えた。

 一方、観光業界には支援事業「Go To トラベル」再開への期待がある。一般社団法人石巻圏観光推進機構が宿泊施設などを対象に実施した2020年度の観光動態調査では、宿泊を伴う旅行が全体の7割を占め、平均消費額は前年より2000円以上アップした。

 事業は年内再開を目指す動きがあり、県内でも宿泊割り引きキャンペーンが始まった。ビジネス客も多い女川町のトレーラーハウス型宿泊村「ホテル・エルファロ」は今月に入り、満室の日も出るなど客足が戻りつつある。

 おかみの佐々木里子さん(52)は「事業者も感染対策を万全にするので、小規模なイベントからでも開いてほしい」と望む。ただ、GoToトラベルは昨年12月、感染が再拡大して中止された。「気の緩みが一番怖い。リピーターでも我慢してくれている人がいる。気兼ねなく訪れてもらえる状況に早くなってほしい」と複雑な気持ちを吐露した。

(この連載は保科暁史、奥山優紀、漢人薫平が担当しました)

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