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英吉作品10年ぶり公開 石巻市博物館、開館記念企画展 来月3日

震災後、東京で開催された「いま、被災地から」で公開された高橋英吉の「海の3部作」=2016年5月21日、東京芸術大学大学美術館

 石巻市の文化財産で、市民に愛されてきた彫刻家高橋英吉(石巻市出身、1911~42年)の作品が東日本大震災から10年ぶりに古里で公開される。震災後、保管していた県美術館(仙台市)から里帰りし、11月3日に同市開成の市複合文化施設(マルホンまきあーとテラス)内に開館する市博物館の目玉の一つとして展示される。英吉作品が心の復興の核として新たな役割を担う。

 将来の活躍が期待されながら太平洋戦争で31歳の若さで戦死した英吉は、生命力にあふれた「海の3部作」(黒潮閑日=38年、潮音=39年、漁夫像=41年)をはじめ、慈愛に満ちた「母子像」(41年)など、多くの作品を残した。戦後、遺族や英吉を知る人たちが、全国に散らばった作品を集め石巻市に寄贈してきた。

 所蔵していた石巻文化センターは震災の津波で被災。2階に展示していた「海の3部作」は無事だったが、1階の作品は海水に浸かった。県美術館が中心になり作品を救出、修復して保管してきた。

 市複合文化施設が完成したことで作品の里帰りが実現する。施設内の市博物館に「高橋英吉作品展示室」を常設。「海の3部作」「母子像」の他、「牛」(35年)、「天平童子像」(39年)といった木彫作品を中心に、デッサンなど計約25点が展示される。文展監査展で入選した「少女像」(36年)=県美術館所蔵=と「聖観音立像」(40年)=石巻高所蔵=はそれぞれ借り受ける。

 展示室の一角には長女で木版画家の幸子さん(80)=神奈川県逗子市=の作品12点も12月26日まで展示される。10年に石巻文化センターで開催して以来の「父娘展」が実現する。幸子さんは「父の作品が石巻に戻り、市民の皆さんにまた見てもらえるのがうれしい」と喜ぶ。

 市教委生涯学習課学芸振興グループは「市博物館には英吉作品展示室のほかに、毛利コレクションや歴史文化の展示室などもある。震災から10年。石巻の文化や歴史、先人を学ぶ新たな拠点にしたい」と話す。

 連絡先は0225(98)4831。

石巻高、市博物館に「聖観音立像」貸与

 高橋英吉の母校・石巻高が所蔵する作品「聖観音立像」が市博物館に展示されることになり、26日、同校から運び出された。

 教員や同窓会の関係者が作業を見守る中、運搬業者が本像と光背、台座を取り外し、慎重に梱包(こんぽう)して搬出した。市の担当者と同校職員が保存状態を確認し、大きな破損などはなかった。

 観音像は1956年、英吉の兄の故寅次郎が同校に寄贈した。寄せ木造りで、光背を含む高さは178センチ。旧図書館で長年保管、近年は専用の展示ケースに入れて図書室に置かれていた。

 観音像は市が同校から借り受ける。協定の調印式が25日、同校であり、高梨正博校長や青木利光同窓会長、宍戸健悦教育長が出席。高梨校長は「卒業生である英吉の素晴らしい作品を一般の人たちにも広く見てもらい、英吉の生きざまに思いを巡らしてほしい」と語った。

光背や台座を取り外し、梱包される聖観音立像

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