閉じる

苦難の世界一周実感 ゆかりの地をネットで結びイベント 石巻若宮丸漂流民の会

国内外8カ所をオンラインで結び、若宮丸漂流民の足跡が寄せられたパブリックビューイング

 石巻若宮丸漂流民の会は10月30日、設立20周年記念イベント「オンラインで結ぶ若宮丸漂流民世界一周の旅」(三陸河北新報社共催)を開催した。パブリックビューイングが行われた石巻市千石町の石巻河北ビルかほくホールでは、詰め掛けた市民が国内外8カ所から寄せられた若宮丸に関するエピソードに、改めてスケールの大きさを実感していた。

 若宮丸は、江戸時代に石巻から江戸に米を運ぶ途中に遭難・漂流し、乗組員16人のうち4人が、シベリア・大西洋・太平洋と旅して日本人で初めて世界一周する形で帰国した。同会は若宮丸漂流民の顕彰を目的に2001年に発足。記念イベントは漂流民ゆかりの地などをオンラインで結んで行った。

 米国アラスカ在住の会員は、漂着地のアリューシャン列島は樹木が育たない風の強い土地と説明。市民は約230年前、自然が厳しい地で生活を余儀なくされた漂流民に思いをはせた。

 漂流民がロシア皇帝に謁見(えっけん)したサンクトペテルブルクからは人類学博物館の学芸員が、漂流民の見たプラネタリウムや地球儀などを解説。日本とロシアの文化交流について言及した。

 国内からは函館日ロ交流史研究会が参加。漂流民の一人でロシアに帰化した善六が、ゴローニン事件でロシア側の通訳として函館に来た意義を強調。善六の再評価を訴えた。

 ほかにロシア・イルクーツクに8年暮らした日本人青年やブラジルのサンタカタリーナ若宮丸協会、若宮丸以前にロシアに漂流した大黒屋光太夫の故郷・三重県鈴鹿市などからも報告があった。会場を埋めた市民は過酷な運命を受け入れ、乗り越えようとした漂流民たちの不屈の精神に共感。市内の自営業石川宏治さん(76)は「ゆかりの地からの話などを聞いて、改めて壮大な物語であることに感動した」と語った。

 オンラインリポートの前に副会長で東北大名誉教授の平川新さんによる講演「『環海異聞』でたどる若宮丸の世界一周」もあった。

関連リンク

関連タグ

最新写真特集

石巻かほく メディア猫の目

「石巻かほく」は三陸河北新報社が石巻地方で発行する日刊紙です。古くから私たちの暮らしに寄り添ってきた猫のように愛らしく、高すぎず低すぎない目線を大切にします。

三陸河北新報社の会社概要や広告、休刊日などについては、こちらのサイトをご覧ください

ライブカメラ