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企画特集>学ラボ 石巻専修大・研究室だより

阿部正英教授(あべ・まさひで):1971年3月生まれ。奈良県生駒市出身。東北大大学院工学研究科博士課程修了。同大学院准教授などを経て今年4月から現職。電子情報通信学会・計測自動制御学会などで委員などを務める。小さい頃から鉄道が好き。石巻市在住。
水野純教授(みずの・じゅん):1971年2月、ブラジル・サンパウロ市生まれ。東京工大総合理工学研究科博士課程修了。大手カメラ会社勤務、東北大研究員を経て2012年に石巻専修大准教授、16年から現職。仙台市青葉区在住。

 石巻専修大(石巻市南境)の専任教員に研究内容や学生への指導方針を尋ねるシリーズ「学ラボ」。2回目は理工学部の阿部正英教授と水野純教授に聞いた。(月1回掲載予定)

理工学部情報電子工学科・阿部正英教授

<ディジタル信号処理を探究>

 研究テーマは「ディジタル信号処理」。パソコンやスマートフォンなどさまざまなハードウェアで扱う情報をディジタル信号として理論に基づき処理する。その技術を約30年間研究している。8月に信号処理に関する教科書を出版し、11月には姉妹版の教科書を刊行する予定。

 応用先の一つがフィルム映像の修復。フィルムは劣化が進むとブロッチという表面の斑点状の損傷やスクラッチという縦に筋が入る損傷、位置ずれなどが生じる。これらを信号処理技術で自動的に修復する。

 昔の記録映像の大半は個人や公的機関が持っていて修復にあまりコストをかけられない。自動で安価に修復できる技術は意義が大きい。「フィルムを修復すると昔らしさがなくなると言われるが、現在の古いフィルムを見慣れた人がそのように感じているだけで本来はノイズのない映像。ディジタル信号処理技術で自動修復を目指したい」

 フィルム映像の修復技術を応用して、長期間の撮影映像を短時間で見る「タイムラプス映像」の修復の研究も。日々の天気の違いによる明るさのばらつきを抑え、位置ずれを補正して見やすくする。

 距離を測るセンサーやカメラを活用し、信号処理で雑音を取り除いて時間経過に伴う変化を取り出すことで遠隔でも呼吸や脈拍の変化をつかめる。接触しない形で体調を管理する方法にも生かせる。

 今春着任しプログラミング論、情報システム概論といった講義を受け持つ。学生との対話を増やすことを願う。「食事をするなどリラックスした雰囲気での会話を大事にしたい。新型コロナウイルスの時代に難しくなっているが、できる限りそんな機会を設けたい」

 演習の機会も大事にしたいといい「作業をやってみてどうなるかを学ぶことが大切。学生が取り組む過程を見ながらアドバイスしたい」。「4年生になると各自で研究し、卒業論文をまとめる。その準備として1年生からの授業や実験に臨んでほしい」と語る。

理工学部機械工学科・水野純教授

<駆動原理の概念覆す研究>

 専攻はナノマイクロシステムで、MEMS(メムス、微小電気機械システム)を専門に研究する。この技術で作られた部品は携帯電話や車、ロボットなどに使われ、大きさは1ミリの1000分の1に当たるミクロン単位。目に見えない世界でさらなる実用化の可能性を探る。最新型のメムスセンサを用いたロボットシステムの研究にも取り組む。

 最近では駆動原理の概念を覆す「マイクロアクチュエータ(動く超小型機械)」の研究に当たる。この分野では非常識的だが、動かすパーツ同士をあえてぶつかりやすくしつつ接触しても問題が起きないような工夫をして、システムが駆動することの証明を目指す。

 「常識的なことをやっても新規性は獲得できない。メムスの研究者が多くいる中、非常識の中で工夫するところにオリジナリティーを出す」との思いがある。

 メムスセンサを使ったアプリケーションを競う昨年10月の国際大会で、指導する学生によるチーム「ROGERIO」が準優勝した。開発したアプリは路面にレーザーを照射し、その反射の様子からアイスバーンの状況を迅速に把握できる。実用性の高さなどが評価された。

 「石巻でも冬場にアイスバーンになる場所がある。日頃の学生の問題意識が大きな結果をもたらした」と喜びを語る。

 学生には主体性と自主性を大切にしてほしいと願う。「こちらからはヒントを与え、学生が自身で調べて考えることで積極的に課題や研究テーマを見つけてほしい」。

 4年生で取り組む卒業研究では1年からの下準備が大事。原理に実践を交えて研究へのモチベーションを上げながら「気付けば最先端の研究をしている」アプローチを心掛ける。

 趣味の筋トレではダンベル2個(計92キロ)を両手で持ち上げ、日々鍛える。学生に贈る言葉は座右の銘の「NO PAIN NO GAIN(苦労なくして得るものなし)」。結果を出すには努力が必要とのメッセージだ。

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