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企画特集>学ラボ 石巻専修大・研究室だより

浅沼大樹教授(あさぬま・だいき):1980年12月、北海道帯広市出身。東北大大学院経済学研究科博士課程修了。旭川大の助教、准教授を経て2020年4月から現職。3歳の長女の子育ての合間を縫って早朝のジョギングで気分転換を図る。仙台市青葉区在住。
野島那津子准教授(のじま・なつこ):1983年7月、大阪市出身。大阪大大学院人間科学研究科博士後期課程修了。日本学術振興会特別研究員、阪大大学院助教などを経て今年4月から現職。息抜きは自宅での電子ピアノ演奏と動画配信サービスによる映画、ドラマ鑑賞。「ホームランド」が好き。石巻市在住。

 石巻専修大(石巻市南境)の専任教員の研究内容や指導への考えを紹介する「学ラボ」。3回目は経営学部の浅沼大樹教授と人間学部の野島那津子准教授に聞いた。(月1回掲載)

経営学部情報マネジメント学科・浅沼大樹教授

<未来社会見通す想像力を>

 「地域の経済循環」の研究に力を入れる。お金を使えば経済が良くなると思いがちだが、中央資本の大型店や飲食チェーンは売り上げが本社に行き、地元でお金が回る仕組みにしないと経済は疲弊し続ける。そんな地方都市の経済システムの再構築を考える。

 旭川大教員の時、農家が作る野菜を学校給食で提供する取り組みを提案し、実践に携わった。学校側が野菜を指定すれば単価を上げやすくなって農家収入が増える。子どもの食育にも役立ち、学校と行政、世代間の人のつながりを生む。石巻地方での実践を目指し、起業も視野に入れる。

 元々は経済理論の研究が中心で実践には関心がなかった。旭川で地域経済の厳しさを目の当たりにし、研究の中心に据えた。

 ビットコインやブロックチェーンの可能性を説く「ビジネスと情報」などの講義を受け持つ。ロジカルシンキング理論の講義では「論理とは何か」に始まり、聞く人の感情を動かすプレゼンテーションを解説する。「伝えることはできても伝わるかどうかが大事」と語る。

 石巻商高で10月にあった販売実習会「石商マーケット」で、2、3年のゼミ生10人が初めて広報チームとして関わった。取り組み方は学生たちに任せ、自身は運営面での助言にとどめた。「学生たちはどうすれば課題を解決できるかを自ら考えるようになった」と成果を語る。

 学生へのメッセージではあえて「大人の言うことは聞かないでほしい」と話す。新しいことを取り入れるのが苦手で企業の新陳代謝が起きにくい日本社会。「情報テクノロジーの影響で今後の社会は全く異なった姿になるはず。その社会を見通す想像力を今までの社会に漬かってきた大人はあまり持っていない。その意味で言うことを聞かない方がいい。違う選択肢もあると意識し、情報を調べてできることを増やしておく。そのために大学での研究を生かしてほしい」と望む。

人間学部人間文化学科・野島那津子准教授

<自ら問い発するのが学び>

 痛みや苦しみを抱えていても医学的な根拠がないため「疾患」と診断してもらえず、他人に「病気」と認めてもらえない。慢性疲労症候群、線維筋痛症といった「論争中の病」について患者約50人に聞き取り、当事者が直面する困難や診断が与える影響をまとめた著書『診断の社会学』(慶應義塾大学出版会)を今年2月に出版した。

 「社会的に認知されにくい当事者の話を踏まえ、一度オープンにしてどう考えますかと提案した。まず問題があるということを理解してほしい」との思いを著書に込めた。

 病気の人を中心とする「社会的排除」が研究テーマの一つ。自身も大阪大3年の時に喉の病気を発症し、声が全く出ない時もあった。いろんな解釈をされてつらい思いをした。「体全体がしんどい人はもっと大変なはず。見た目は健康そうなのに症状が外に現れない人はより複雑な排除の状態に置かれているのでは」との思いから研究領域を広げた。

 大学では1年生向け社会学概論や2年生以上の社会調査論、家族社会学、地域社会論などの講義を担う。3年生5人が学ぶゼミでは社会の仕組みや人口減少社会に関する書籍を読んで議論する。「どう日本で生きていくことを考えるのか。一人一人が答えを見つけてほしい」と願う。

 2年生向けのゼミ生の募集原稿に「物事を批判的に考える学生を歓迎します」と書いた。

 「これまでは書かれたものを全部その通りと思ってやらないとテストで良い点は取れなかった。でも大学ではテキストに書いてあることをそのまま受け止めても何の意味もない。なぜこうなのか、他の考えもあるのかなど自分から問いを発することが学びだ」と強調。「疑問を持ち、批判的な捉え方をするのは社会でも必要なこと。教員の側がヒントを出し、批判的に考えるチャンスを与えたい」と語る。

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