とうほく潮風ドライブ・南へ(上) 石巻河南-山元
石巻市から太平洋沿岸の高速道路を使い、東北最南端のいわき市を目指した。
三陸沿岸道と仙台東部道路を走り、仙台市宮城野区の仙台港インターチェンジ(IC)を下りた。約10分ほど走ったところで高盛り土道路から視線を落とすと、広大な敷地に立ち並ぶビニールハウスが見えた。
昨年3月、若林区荒浜地区にオープンした「JRフルーツパーク仙台あらはま」。防災集団移転跡地約11ヘクタールを利用し、8・1ヘクタールにイチゴ、リンゴ、ブドウなど8品目を栽培し、観光農園としては東日本最大規模になるという。
併設するレストラン「Les Pommes(レ・ポム)」では、ホテルメトロポリタン仙台のシェフが腕を振るう。注文したのは「森林どりのチキンカレー」。程よい辛さと口の中でほぐれる鶏肉が絶品だ。地元産の野菜を使った色とりどりの副菜も楽しめた。
腹ごしらえを終え、閖上地区の閖上大橋を渡って次の目的地を目指した。シルエットだけが見えていた山の表情がはっきりし出したころ、仙台東部道路から常磐道に切り替わった。
山元ICから約11キロ走り、山元町の東日本大震災遺構中浜小に到着した。県南唯一の遺構として、津波で被災した校舎をできる限りそのまま保存している。
「第3波は学校の屋上に達する高さだった。引き波とぶつかって崩れたので助かった」。震災当時、町坂元中の校長だったガイドの渡辺裕之さん(65)が実体験を語ってくれた。
屋上には児童ら90人が一夜を過ごした倉庫がある。床には寒さをしのごうと敷き詰めた段ボールや学芸会の小道具が広がっていた。不安な夜を生き抜いた子どもたち。彼らの息遣いが確かに聞こえた。