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女川原発防災訓練 規模を縮小、住民参加見送り 10~12日実施

2019年11月にあった県と原発30キロ圏内の7市町による原子力防災訓練。台風19号の影響で規模を縮小して行われた=東松島市鷹来の森運動公園

 内閣府や原子力規制庁は4日、東北電力女川原発(女川町、石巻市)の重大事故を想定した原子力総合防災訓練を10~12日に実施すると発表した。新型コロナウイルスの感染対策として参加人数を絞り、県側の意向で住民参加は見送る。

 山口壮原子力防災担当相は閣議後の記者会見で「原子力災害はいつ起こる分からず、規模を縮小してでも開催する意義がある。直前まで感染状況を注意深く見守りつつ、基本的には開催する」と述べた。

 訓練は当初の想定よりも規模を縮小し、国や県、自治体、警察、消防、自衛隊など約1000人で演習する。住民参加は見送り、県職員らが住民役を務める。

 宮城県沖を震源とする地震と津波の複合災害で運転中の女川原発2号機が緊急停止し、設備の故障も重なって原子炉が冷却できなくなるとの想定。訓練を通して各機関の連携や原発30キロ圏内の約20万人を対象とした広域避難計画の実効性を検証する。

 10日は災害対策本部の運営や関係機関の情報共有、11日は5キロ圏内の予防的防護措置区域(PAZ)や牡鹿半島南部と離島の準PAZ住民の避難、12日は5~30キロ圏の緊急防護措置区域(UPZ)住民の避難などを実施。訓練期間中、離島や半島部からのヘリコプターや船を使った避難も検証する。

 住民を不参加としたことについて、山口氏は「官邸と現地の連携など試すべき訓練はあり、住民参加がなければ全く成り立たないわけではない」と述べた。

 国は過酷事故を想定した総合防災訓練を全国の原発立地地域などで毎年1回実施しており、女川原発が開催場所となるのは初。昨年2月に予定していた訓練は新型コロナの影響で当面延期となり、その後2020年度中の実施を断念した。

<コロナ拡大、訓練に住民から不安の声>

 新型コロナウイルスの影響で延期された東北電力女川原発の原子力総合防災訓練の実施が決まった。感染拡大が続く中で住民の参加は見送られたが、参加者の規模は約1000人。住民からは「コロナ下での開催は不安」といった戸惑いの声が聞かれる。

 訓練は県側の意向で住民参加を見送り、代わりに県職員らが住民役を務める。村井嘉浩知事は「市町村長に確認したところ、コロナ下で住民の避難訓練をするのは危険ではないかという声があった。訓練は来年度以降、別の形で改めて行いたいと思う」と述べた。

 県内の3日の1日当たりの感染者数は過去最多の683人となり、石巻地方でも2日続けて最多を更新。住民が参加しないとはいえ、不安視する声はある。

 女川町の無職男性(75)は「女川は高齢者が多く、みんな外出を控えて感染対策にすごく気を使っている。感染が特に広がっている中で外から人が来るのは正直不安がある」と明かす。

 石巻地方では1月中旬以降、小中学校などの臨時休校が相次ぐ。長男が通う学校が休校となった石巻市の40代女性は「今の状況で開催されるのは怖い」という。「東日本大震災でいつ何があるか分からないと思った。自分の避難先を知らない人もいると思うので、本来は少しでも住民が参加できる状況で実施した方がいい」と複雑な思いを語る。

 東北電は女川2号機の2022年度以降の再稼働を目指しており、新型コロナが再稼働時も収束していない可能性はある。

 防災士の資格を持つ石巻市渡波町の無職男性(80)は「コロナ下だろうが別の感染症がまん延していようが、災害や事故は起きる時は起きる。対策を万全にして実施し、訓練結果を一つのデータにするべきだ」と話した。

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