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女川原発 国の原子力防災訓練、あすから 県や30キロ圏7市町など

 国は10~12日、東北電力女川原発(女川町、石巻市)の重大事故を想定した原子力総合防災訓練を開く。原発から半径30キロ圏の約20万人が県内31市町村に避難する広域避難計画に基づき、県の訓練と一体で実施する。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、地元住民の参加は見送った。

 国が女川原発で訓練を開くのは初めて。宮城県沖で発生した地震と津波で女川2号機が緊急停止し、原子炉の設備故障も重なって冷却不能となる事態を想定する。迅速な初動態勢の確立や国と現地の連携による意思決定、住民避難に重点を置く。

 国や県、30キロ圏内の7市町など128機関の約2270人が参加。住民参加を見送る避難訓練は、各自治体職員が住民役を務める。

 10日は午後3時に地震が発生したとの想定で訓練を開始。東北電からの一報を受け、県は災害対策本部会議を開く。11日は首相官邸や県、各市町などをつないでテレビ会議を開き、対応を確認する。

 避難訓練は11、12日に実施。11日は原発5キロ圏内の予防的防護措置区域(PAZ)と、準PAZの牡鹿半島南部と離島から避難する。女川町の4地区は栗原市、石巻市荻浜地区は大崎市へ向かい、避難者を振り分ける避難所受付ステーション(ST)を経て避難所へ移動する。

 原発5~30キロ圏の緊急防護措置区域(UPZ)は、屋内退避と指示が出た場合の避難を訓練する。12日の避難訓練では、放射性物質の検査や除染を受ける避難退域時検査場所、避難所受付ST、避難所を目指す。女川町の20地区は栗原市へ、石巻市渡波地区は大崎市、東松島市小野地区は名取市、野蒜地区は亘理町に向かう。

 移動には主にバスを使用し、離島と半島部からは自衛隊などと連携し、船やヘリコプターも使う。新型コロナへの対応として、感染の疑いがある避難者は動線を分けるといった対応も実践する。

<コロナ下で住民不参加>

 東北電力女川原発(女川町、石巻市)の重大事故に備える国と県の原子力総合防災訓練は、新型コロナウイルス感染拡大で住民の参加を取りやめた。大半が原発30キロ圏に入る石巻地方は、有事の際に広域への避難を迫られる。住民不参加で検証できる課題は限られたが、各市町は「手順の確認などに生かす」と口をそろえ、訓練の結果を避難計画の検証に生かす考えだ。

 石巻市は3日間で延べ約160人の職員が参加する。渡波地区から約50人が大崎市に向かう12日は、バス3台と公用車30台を出す。市危機対策課の担当者は「ある程度の車列を作らなければ、検査場所などで課題を抽出できない」と説明する。

 住民不参加が決まる前は2日間で25人ほどが避難する予定だった。担当者は「長距離の移動を体験してもらい、意見を聞きたかった」と残念がる。2022年度の県主催の訓練では、複数の地区からの避難を模索するという。

 女川町は2日間で職員16人が住民役を務める。住民を乗せる避難バスが町内の集合場所を回り、ルートや停車位置などを確認。出島からは離島航路の臨時便で女川港に、江島からは自衛隊のヘリコプターで石巻市総合運動公園にそれぞれ向かい、バスに乗り換えて栗原市へ避難する。

 当初は住民約80人が参加予定だった。町企画課の担当者は「住民参加がなくても予定通りバスを走らせ、受付ステーションでの手順などを確認できる」と強調。「これまでも住民が実際に避難する研修会を開いてきた。今後も機会をつくりたい」と話した。

 東松島市は12日、小野地区から名取市、野蒜地区から亘理町への避難を職員34人が実践する。いずれも三陸沿岸道と一般道の計3ルートで移動し、所要時間の検証に生かす。野蒜地区の避難所の亘理中では亘理町職員との連携も訓練する。

 原発30キロ圏の広域避難計画では、避難車両による渋滞の発生などが懸念され、実効性を疑問視する声が根強い。ある自治体関係者は「実際に渋滞が起きるような訓練は不可能。シミュレーションで検証するしかない」と明かし、県が22年度に再実施を予定する避難シミュレーションの結果を注視する。

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