希少トラ誕生なるか 仙台・八木山動物公園、繁殖の実績重ねる

 絶滅の危機にひんするスマトラトラの繁殖に、仙台市八木山動物公園(太白区)が成果を上げている。10年間で8頭が生まれ、うち5頭がすくすく育つ。繁殖に適した年齢の雌ダマイ(7歳)が昨年12月に来園し、「とら年ベビー」の誕生に期待が高まる。(編集局コンテンツセンター・藤沢和久)

環境問題にも理解を

 スマトラトラはインドネシア・スマトラ島が原産。暖かい気候に適し、体は小さく毛が短く、模様がはっきりしているのが特徴だ。

 生息域の熱帯雨林は、パーム油の原料となるアブラヤシの農園開発で面積が減少。毛皮などを目的とした密猟も横行し、数を減らした。現在はスマトラ島に約300頭いるとされる。

 飼育展示係長で、日本動物園水族館協会からスマトラトラの種別計画管理者を委嘱されている吉住和規さん(47)は「スマトラトラに興味を持ってもらえば、一人一人に環境破壊を避ける行動を考えてもらえるはずだ」と狙いを明かす。

雄のケアヒ。八木山動物公園に来て10年以上になる

 八木山動物公園は、2002年に展示を始めた。猛獣舎の完成に合わせ、上野動物園(東京)からつがいを迎えた。高齢で繁殖に至らないまま04年に雄のディノ、10年に雌のリップが死ぬ。国内のスマトラトラは上野など3施設の計7頭だけになった。

 「このままでは日本にいなくなる」。吉住さんは危機感を募らせた。とはいえ、国内で繁殖に成功したのは1984年と97年、いずれも上野動物園の2例だけだった。

 理由はペアリングのタイミングの難しさ。野生のトラは単独で生活し、雄が縄張りに入ってきた雌に危害を加えることもある。雌は恐怖から雄に背中を見せなくなってしまう。

 それでも八木山動物公園は、ペアでの飼育を目指した。国内外の関係機関と交渉し、2011年に米国から雄「ケアヒ」(13歳)、オランダから雌「バユ」(15歳)を受け入れた。

 12年は死産などで成長に至らなかったものの、翌13年に雄の「ブラン」「アカラ」と雌の「アイナ」「ラウト」の四つ子、19年に雄「アオ」が生まれた。

 子だくさんの秘策は「2体の相性に尽きる」(吉住さん)というものの、雌雄の鳴き合いや、地面を転がるといった行動を飼育員が日々観察。ふんに含まれる性ホルモンの量を分析し、発情の兆候を見極める確度を高めている。

国内のスマトラトラ「家系図」

 よこはま動物園(横浜市)で14~19年に5頭が誕生し、国内では7施設の計18頭となった。最悪の危機は脱しつつあるようだ。

 しかし、繁殖に適した年齢の個体は雄5頭、雌4頭。大半が八木山動物公園かよこはま動物園生まれで、組み合わせは限られる。国内で生まれたスマトラトラが出産に至った例はまだない。

 週2回ほど柵越しに「お見合い」をするケアヒとダマイ。展示中も互いに鳴き合ったり、柵のそばに近寄ったり、互いを気にするそぶりを見せる。

 ネコ科のスマトラトラ。個体差はあるものの、1~2カ月おきに発情し、妊娠期間は約100日だ。早ければ夏前にも赤ちゃんが誕生する可能性がある。

 吉住さんは「国内の個体群を維持できるかどうかは今が勝負だ。何とか成功させたい」と、新婚カップルに熱視線を送る。

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