花粉症の治療法どう選ぶ? 効果高い注射薬登場、免疫療法や手術も

 「国民病」とも言われる花粉症との闘いが今年も始まろうとしている。新たな注射薬が登場するなどし、治療の選択肢は広がっている。どのように選べばいいのか、東北医科薬科大病院(仙台市宮城野区)の耳鼻咽喉科長、太田伸男教授(59)に助言してもらった。
(編集局コンテンツセンター・佐藤理史)

抗体薬「ゾレア」に注目

 スギ花粉症の患者は年々増えている。日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会の全国疫学調査によると、有病率は38・8%(宮城39・7%)で08年を12・3ポイント上回った。10代の若年層と50~70代の中高年層で増え、全世代に広がっている。中等症以上が8割を占め、軽症者が少ないのが特徴だ。

 治療法として近年注目されているのが抗体薬のオマリズマブ(製品名ゾレア)。「IgE」というアレルギー反応に関わる抗体をブロックする。対象は既存の治療では効果が不十分な重症患者。2~5月、2週か4週ごとに注射する。

 気管支ぜんそくなどの治療薬として認可され、19年末に花粉症に適応拡大された。「10人ほどに使った。すごく効く薬で、症状は全くなくなる」という。

 ネックは費用の高さだ。1本(150ミリリットル)が3割負担で約9000円。IgE濃度と体重によって使用量を調整するさじ加減が難しい。1回3、4本を要する場合もあり、普及しきれない要因になっている。

注射薬の「ゾレア」。抗体薬として初めて重症花粉症に適応拡大された(ノバルティスファーマ提供)

治癒目指すなら舌下免疫療法

 根本的な治癒を目指すなら舌下免疫療法が有効だ。スギ花粉のエキスを薬液か錠剤で少しずつ取り込み、時間をかけて徐々に増やして体に慣らしていく。近隣の医院を含めて約1000人が取り組んでいる。

 8割の人が治癒するか、症状が改善するとされる。費用負担は月約1200円と比較的大きくない。

 厄介なのは花粉症のシーズン以外も毎日、しかも2、3年は服用を続けないといけない点。3年続ければ、3~6年間は効き目が持続するが、その後は再発する可能性がある。5年続けている人も結構多い。

薬物療法は症状軽い時期から

 一般的な薬物療法は初期療法が非常に大事だ。花粉の飛散が本格的に始まる前、または症状が軽い時期から予防的に薬をのみ始めることを薦める。炎が燃え上がったら少しの水では消えないのと同じ。早めに対処すれば、シーズン全体で薬の量は少なくて済む。費用は月3000~4000円程度だ。

 宮城県では早ければ1月中に1度、花粉が西風に乗ってくることがある。新型コロナの患者が無症状の場合、花粉症症状のくしゃみや鼻水で感染を広げてしまう可能性もある。少しでも鼻がおかしいなと感じたら、早めに受診してほしい。

鼻の粘膜を焼く手術療法も

 手術療法もある。費用は内容によって異なる。鼻の粘膜の表面を焼く手術なら外来で終わり、1万~2万円で済む。入院が必要になれば10万円を超える場合があり、高額療養費制度の対象になる可能性がある。

 おおむね半数は花粉症の季節に薬をのめば、何とか乗り越えられる。残り半分の人はどのように治療法を選べばいいだろうか。

 しっかり治したいという意思があり、毎日薬をのめる根気強さがあれば免疫療法が良い。

 病院に頻繁に通うのは難しいが、夏休みなど一定の期間を治療に当てられる人には手術を薦める。

 免疫療法を続けられず、金銭的な余裕がある人は抗体療法。受験生やスポーツ選手からの希望がある。

 悩ましいのは若い女性。妊娠の可能性があると薬は使いづらい。前もって相談すれば時間をかけて免疫療法に取り組んだり、先に手術したりできる。受験などを含めたライフイベントを踏まえ、医師と患者が話し合って治療方針を決めるのがいいだろう。

「早めの対策が肝心」と話す太田教授=2022年1月21日(東北医科薬科大病院提供)

まずは規則正しい生活を

 忘れてはいけないのが十分な睡眠、バランスの良い食事など規則正しい生活を送ることだ。くしゃみ、鼻水、鼻づまりは本来、異物から体を守る仕組み。過剰になっている状態を落ち着かせてあげる必要がある。生活リズムが崩れると、ホルモンの分泌バランスが乱れ、起床時に激しい症状が出る「モーニングアタック」につながる。

 食事は抗酸化作用があるビタミンA、C、Eのいわゆる「ビタミンACE(エース)」を積極的に取りたい。かんきつ類、大根おろし、ソバなどに多く含まれている。ヨーグルトを継続して食べて、腸内環境を整えるのも良い。

 何か一つで花粉症を抑えるというのでなく、バランスを大事にし、体の状態に気を配ってもらいたい。

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