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女川原発 総合防災訓練2日目、放射性物質放出を想定 住民避難の手順確認

住民避難に向け鮎川港に到着した石巻海上保安署の巡視艇=11日午前10時50分ごろ
自衛隊員の誘導で仮設橋を渡る車両=11日午後3時15分ごろ

 東北電力女川原発(女川町、石巻市)の重大事故に備える国と県の原子力総合防災訓練は2日目の11日、原子炉から放射性物質が放出される事態を想定し、政府と自治体の連携や周辺住民の避難誘導、屋内退避の指示といった対応を確認した。

 前日の地震と大津波警報で緊急停止した原子炉が冷却不能になり、政府は「原子力緊急事態宣言」を発令。首相官邸と現地対策本部の県女川オフサイトセンター、県庁、女川町、石巻市をテレビ会議でつなぎ、原子力災害対策本部会議を開いた。

 岸田文雄首相は原発5キロ圏の女川町と石巻市、牡鹿半島南部、離島の住民に即時避難を、5~30キロ圏に屋内退避を指示し「事態の早急な収束と国民の安全確保を最優先に全力で対処する」と述べた。

 各機関が状況を報告し、女川町の須田善明町長は「輸送手段の確保など自衛隊や関係省庁の支援をお願いする。関係自治体や機関は5~30キロ圏の住民に冷静な行動を呼び掛けてほしい」と求めた。

 避難訓練は新型コロナウイルス感染拡大で住民参加を取りやめ、自治体職員が住民役を務めた。女川町は五部浦、北浦、出島、江島4地区から栗原市へ、石巻市は荻浜地区から大崎市に避難し、誘導手順や避難所での感染対策などを確認した。

 離島や半島部では自衛隊などと連携して船やヘリコプターでの避難も試した。石巻市の鮎川港では石巻海上保安署の巡視艇「しまかぜ」が接岸。署員と市職員が避難する住民を乗せる手続きを確認し、搬送先の石巻港に向かった。

 港にいた同市牡鹿地区の60代会社員男性は「海の状況によっては船を出せない。訓練を重ねることは大事だが、訓練通りにいくかは疑問だ」と話した。

 訓練最終日の12日は、5~30キロ圏7市町の住民避難を確認する。

<陸自、仮設橋を設置>

 国と県の原子力総合防災訓練に伴い、陸上自衛隊による架橋訓練が11日、女川町清水地区であった。災害で橋や道路が壊れた際に応急的に使う組み立て式の橋を設置。自衛隊や国、県の車両が実際に渡り、緊急時の有効性を確認した。

 自衛隊第6施設大隊(山形県)の隊員ら約50人のほか、務台俊介内閣府副大臣や村井嘉浩知事、須田善明町長らが参加。隊員の説明を受けた後、訓練現場の川に設置された仮設橋を車で渡った。

 橋は隊員約20人が約2日間かけて設置した。四つのパーツで構成され、長さ約30メートル、幅約4メートル。支柱がなくても架けられるのが特徴で、最大で約60メートルまで延ばすことができる。

 訓練を終えた村井知事は「訓練の想定にもある地震や津波で橋が落ちることは十分考えられる。今回の訓練がいざという時の備えになる」と語った。

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