企画特集>学ラボ 石巻専修大・研究室だより
石巻専修大(石巻市南境)の専任教員の研究内容や学生へのメッセージを紹介する「学ラボ」。最終回は人間学部人間教育学科の横江信一特任教授と経営学部の李東勲教授に聞いた。
人間学部人間教育学科・横江信一特任教授
<子どもに寄り添う教員に>
石巻市釜小校長などを務めたキャリアを生かし、教育、保育の現場で活躍できる人材を育てる人間教育学科で指導する。研究テーマは学級経営やキャリア教育、総合的な学習の時間の指導法など多岐にわたる。
ゼミに当たる「学級経営研究室」では学級経営の基盤となる望ましい人間関係づくりに焦点を当てる。相手と折り合いをつけながら合意形成を図る「集団思考」の仕組みなど主体的で深い学びにつながる実践研究に取り組む。
研究に力を入れるのは「教員時代のさまざまな感動があったからこそ」と言う。退職者増などに伴い教員の質の低下が叫ばれる中、現場力と実践力を身に付けた人材育成を目指す。
石巻の全校での郷土学習や防災学といった共通カリキュラムの必要性といった提案に向けた研究にも熱心だ。
石巻専修大の開放センター教育連携部会長として本年度、若手教師の指導力向上を図る「教師塾」を始めた。県東部教育事務所管内の小中学校に勤める5年目までの教員や講師、教員を目指す学生ら延べ約100人が参加した。
養成・採用コースでは教員採用試験対策として一般教養や関係法規をはじめ集団討議で社会を取り巻く課題を学んだ。研修コースではよく分かる授業づくりの進め方や教師の役割について理解を深める。
「学生は現役の教員の声を聞き、教員は初心を見つめ直す機会にもなっている。養成から研修までを一体的に学べる場として軌道に乗せたい」と意欲を語る。
学生に贈る言葉は「学級の一人一人の声なき声に耳を傾けられる教員になってほしい」。良いクラスとは勉強のできる子や教員の言うことをすぐ理解する子ばかりがいることなのか。それは教師にとって都合の良いクラスといえないか。そばに来られない子や家庭環境の複雑な子と事情はさまざまだ。「子どもに寄り添う気持ちを忘れない教員を目指し、日々の学びに生かしてほしい」と願う。
経営学部・李東勲教授
<失敗は学ぶ場と伝えたい>
中小企業のマーケティング論を主に研究する。着目するのがプロモーションでのコミュニケーション戦略の重要性だ。新しい製品やサービスのPRに当たり「誰に何を伝えるか」と「タイミング」に重きを置く。
2~4年生21人が所属するゼミではマーケティングを実践的に学び、実行を通して応用力や社会的規範の習得を目指す。研究成果は経営者に示して事業の参考にしてもらう。教育方針の根底には専修大時代の指導教官だった教授の言葉「(研究は)世のため人のために」がある。
ゼミ生の大きな成果が東松島市産のノリを生かした加工食品「のりうらら」の開発だ。JR矢本駅前「東松島あんてなしょっぷあきんど」で販売している。ご飯のお供といったイメージを脱し、目指したのは「パンのおかず」。東松島産の梅干しをつぶして加熱し、粉末にしたノリとペースト状に仕上げた。
ゼミ生は食品成分や味覚の研究、サンプル品を使ってアンケートするなど試行錯誤を重ね、製造販売でノリの生産者や飲食店と連携して商品化を実現した。「彼らの情熱と行動力は頼もしい限り。社会に出ても大いに活躍できる」と語る。
大学では1年生に基礎知識を学んでもらうマーケティング入門をはじめ、流通論、マーケティング戦略論などを教える。
学生には「覚える。理解する。活用する。勉強方法の大切な3段階を忘れないでほしい」と強調する。暗記は何かと悪者にされがちだが「自分の言葉で人に説明できて初めて理解できているといえる。そこから活用や応用の発想が生まれる。基本をおろそかにしてはならない」と言う。ゼミでは徹底して覚えることを大事にし、2年生は現在、3冊目の本を覚えるように読んでいるという。
活用や応用に関し「失敗は成功のもとと教えながらそれを学ぶ場を与えてこなかったのはわれわれ大人の責任。しっかりと大切さを伝えたい」と意気込む。