がん医療高度化の視点で議論を 仙台圏4病院再編 宮城県立病院機構・荒井陽一理事長に聞く

荒井陽一理事長

 宮城県が主導する仙台医療圏4病院再編に向けた協議が本格化している。県立がんセンター(名取市)と県立精神医療センター(同)を運営する県立病院機構の荒井陽一理事長に、新病院の将来像を聞いた。荒井氏は、がん医療の高度化という本来の目的に立ち返って、十分に議論する必要性を強調。精神医療センターの移転に伴う課題も指摘した。(聞き手は報道部・相沢みづき)

相互に補うメリット

 -県は、がんセンターと仙台赤十字病院(仙台市太白区)を統合し、名取市への整備を想定する。

 「医療圏がほぼかぶっていて、競合していない。双方にない部分を補うメリットはある」

 「がんセンターは高齢化に伴い、がんを総合的に診療できる病院を意識的に目指してきた。診療科はこの10年で倍の26科になった。まだまだ足りないところもあるが、その意味では統合のメリットは少し薄くなっている」

 -救急医療や周産期医療といった論点が目立ち、出発点だったがん医療の在り方が見えてこない。

 「ちょっと心配している。高度ながん医療をどう継続、発展させるのかを議論しないと、県民にとって全然魅力のない病院になる。通り一遍のがんだけ治療する病院では意味はない」

 「救急や周産期は場所をどこに置くかで機能は維持されるが、がん医療はかなり変質する可能性がある。今は全ての医療資源をがんにつぎ込み、高度できめの細かい医療ができているが、高度医療が薄まる可能性がないか懸念している」

コンセプトにずれ

 -精神医療センターが再編構想に追加された。

 「老朽化した建物の一日も早い建て替えが長年の案件だった。歯車が動きだしたという意味で、一定の評価をしたい」

 「40年もたつと医療も変わる。今は一般的に急性期だけ診て、地域や日常生活になるべく帰す。建物は療養型の構造で4人部屋が多く、個室が圧倒的に足りない。救急を断ることもままある。病院を造ったときのコンセプトと合わなくなってきている」

 -県は東北労災病院(青葉区)と合築し、富谷市への移転を計画する。

 「県南を中心に多くの患者がいる。仙台市を挟んで南から北への移動はなかなか大変。通院できるのかという問題に加え、環境が変わると病状が悪化することも当然ある。サテライトの診療機能や訪問看護ステーションの一部を残さないと厳しいのではないかと思う」

 「精神医療は地域のグループホームや就労支援施設に支えられている。(現在の精神医療センター周辺では)住民を含め、受容する文化が培われている。地域との結び付きを大事にしなければならない。もし富谷に移って急性期を24時間受け付けても、(周囲に支える施設ができないと)お帰しする場所がない。関係者との十分な協議、丁寧な検討が必要だ」

 -職員の負担も大きい。

 「職員の9割が名取、岩沼両市や太白区に住む。特に夜勤のある看護師は、通勤が困難と判断して辞職者が一定数、出るだろう。精神医療に特化した知識やスキル、経験を持ったスタッフがたくさんいる。長年かけて育った人材を一部失ってしまう恐れがある」

[仙台医療圏4病院再編構想]宮城県は2020年8月、県立がんセンターと東北労災病院、仙台赤十字病院の3病院連携・統合構想を発表。21年9月、がんセンターと赤十字病院の統合、県立精神医療センターと労災病院の合築による枠組みに変更した。村井嘉浩知事は同10月の知事選で、統合した新病院を名取市、合築した新病院を富谷市に整備する案を公約に掲げ、5選を果たした。県は22年度一般会計当初予算案に調査費8360万円を計上。関係機関による22年度中の基本合意を目指す。

荒井陽一(あらい・よういち)氏 京大医学部卒。01年から東北大大学院医学系研究科教授(泌尿器科学)。東北大病院副病院長などを経て、18年4月に宮城県立がんセンター総長。19年4月から県立病院機構理事長を兼務。69歳。山形市出身。

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