男女賃金情報公表へ 格差是正の端緒にしたい 社説(5/4)

 男女の賃金格差是正の端緒となるのだろうか。

 政府は、企業に義務付けられている女性の登用状況に関する情報公表の対象に、男女の賃金状況を加えることを検討している。

 学生や投資家が企業を選ぶ際の判断基準として男女別の賃金により重きを置くようになれば、企業は格差是正や女性のキャリア開発に力を入れることになるだろう。公表の意義は小さくない。

 厚生労働省によると、2020年の女性の所定内給与(月額平均)は25万1900円で、男性33万8800円の7割強にとどまる。賃金差は管理職の数や勤続年数などから年齢が高くなるにつれて広がる傾向にある。

 国際的にも、日本の格差は大きい。経済協力開発機構(OECD)の21年の調査では、日本の男女間の所得差は加盟38カ国中、韓国、イスラエルに次いでワースト3位だった。

 女性活躍推進法は従業員301人以上の大企業に、管理職の女性割合や男女の平均勤続年数、育休取得率などから最低2項目の公表を義務付けている。企業に都合の良い項目を選べるため、賃金状況に関しては義務化も検討する。

 また、金融庁は3月、金融審議会の作業部会に有価証券報告書の記載内容を見直す案を示した。「従業員の状況」を示す項目に、開示されている従業員数や平均年齢などに加え、管理職の女性比率や男性の育休取得率とともに男女別の給与水準の記載を求める案が有力視されている。

 男女別給与は記載事項になっていたが、開示内容を簡素化する流れの中で、1999年3月期で廃止された。

 これまでも厚労省などで給与格差を巡る議論はあったものの、「企業によって所得の定義が違い、比べにくい」などの慎重な意見が多かった。

 だが、ヨーロッパを中心に企業の男女間賃金格差の情報開示に関する義務化は進んでいる。投資判断では女性が活躍しているかどうかが重視され、女性幹部の割合が高いほど業績が上向くとの分析もある。女性関連の情報開示の拡充は時代の要請で、企業はより一層の意識改革を求められていると言ってもよい。

 雇用形態や年代を含む公表範囲をどう設定するかは今後調整する。一方で、賃金は経済情勢や経営環境により変動しやすいため、公表された数字が独り歩きすることを警戒する声もある。

 岸田文雄首相は「成長と分配の好循環」の一環として女性の賃上げを促したい考え。3月8日の国連「国際女性デー」のメッセージでも「賃金格差の是正に向けた企業の開示ルールを見直す」と語り、強い意欲を示した。

 ただ、情報公表の義務化を正社員に限ると、非正規雇用が取り残される懸念が残る。非正規対策の拡充、強化も求められる。

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