飯豊電池バレー構想、再び足踏み 町が26億円超出資の貸し工場、稼働見通せず

操業の見通しが立たない貸し工場=山形県飯豊町添川

 山形県飯豊町などが曲折を経て進めてきた飯豊電池バレー構想が、再び行き詰まりの様相を呈している。電池部材の生産拠点として町が26億円超をかけて整備した貸し工場は、企業の利用が始まる予定だった4月初旬までに運営体制が固まらず、今も稼働が見通せない。町は構想関連で国の補助を含め約41億円を投じており、町議らからは事業の軌道修正を求める声も出ている。

建物は既に完成

 町内の工業団地の一画、約2万平方メートルの敷地に鉄骨2階の貸し工場が立つ。4月下旬になっても敷地内に人影はなく、静けさに包まれている。

 リチウムイオン電池の主要部材「セパレータ」を製造する拠点として整備計画が持ち上がり、建物は2019年に着工、20年に完成した。21年度時点では、22年4月から順次、生産に使う機材が運び込まれるはずだった。

 活用の主体は、山形銀行(山形市)などが出資する町内のベンチャー企業「セパレータデザイン」。利用について計画当初から町と大枠の合意があり、町も同社の入居を前提として設備を整えた経緯がある。

 操業を間近に控え、町と同社が交わす覚書の内容が問題化した。町が覚書案で「20年」とした工場利用の契約期間を巡り、セパレータ社の関係者から「期間が長い」との不満が噴出。長期の事業継続を求める町と、折り合いがつかない状況に陥った。

 町商工観光課の担当者は「今回の遅れで工場の事業内容や構想全体が大きく変わることはない。できるだけ早期に操業してもらえるように調整したい」と言う。

「現実路線に転換を」

 工場に関連し、町と山形大が計15億円を投じて町内に建てた旧「山形大xEV飯豊電池研究センター」も先行きが不透明だ。山形大は研究が実用化段階に移ったとして21年秋に運営から撤退。続いて利用するセパレータ社は、貸し工場が軌道に乗れば事業の軸足を移すとみられている。

 町は今年3月、静岡大の研究所と共同研究に関する連携協定を締結した。センターの活用も想定される一方で、同研究所スタッフは町に常駐せず、今後のセンターの在り方は町民にとって分かりにくいままだ。

 進展をチェックする立場の町議会は21年秋に設けた特別委員会で、町に詳しい説明を求めている。特別委は3月、一連の事業について「順調と言える状態ではない」とする中間報告をまとめ、現状の厳しさを示した。

 ある町議は「町民にとって納得できる成果を一刻も早く出すことが必要だ。これまでの理想論に終始せず、事業を見直して現実路線へ転換するのも選択肢だ」と語る。

[飯豊電池バレー構想] 蓄電関連産業の集積により雇用創出や人材育成、交流人口の拡大を目指す地域創生策。2014年に始動し、山形県飯豊町と山形大、山形銀行の3者が16年に連携協定を結んだ。構想に沿い、研究者らの来町に対応するホテルや屋台村も整備された。

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