【東北学院大博物館学芸員 佐藤敏幸氏】
<ごみ捨て場 再生も願う>
「貝塚」って聞いたことがあると思いますが、具体的には何でしょう?
「塚」と名前が付いているので、貝がこんもり山のように堆積する形を想像する人もいると思います。確かに海外では山のようになっている貝塚(Shell Mound)もありますが、日本ではほとんどの貝塚が斜面に形成されるので高まりはありません。
■全国の25分の1
貝塚は全国に約2500カ所あり、宮城県では332カ所、石巻地方には105カ所確認されています。この数を見ると、全国の貝塚のおよそ7分の1が宮城県に、石巻地方に全国の25分の1が集中していることが分かります。
この地域は貝塚の宝庫なのです。石巻市稲井にある国史跡沼津貝塚や南境貝塚、東松島市の国史跡里浜貝塚や県史跡平田原貝塚、女川町の尾田峰貝塚、気仙沼市の田柄貝塚など、教科書に出てくる著名な貝塚がたくさんあります。さらに、沼津貝塚と里浜貝塚出土品の一部は重要文化財に指定されています。
■縄文早期に登場
貝塚は定住生活が安定した約1万年前ごろの縄文時代早期に作られ始め、約2500年前ごろの縄文時代終末まで続きます。地域によっては、弥生時代や奈良・平安時代の貝塚もあります。教科書では「貝塚とは、貝が採取できる場所に住む先史時代の人々が、日々ごみとして大量に出る貝殻と他のさまざまな生活廃棄物と共に長年にわたって捨て続けることで、それらが堆積した場所をいう」と習います。簡単に言うと、縄文人のごみ捨て場です。でも単なるごみ捨て場ではありません。
アサリやハマグリ、ヤマトシジミ、カキ、アワビなどの大量の貝殻の他に鹿やイノシシなどの獣、ガン、カモ、ウミウなどの鳥、マグロやサバ、アジ、イワシ、アイナメなどの魚の食べかす、壊れた縄文土器や塩を作った土器、石器、骨・角・貝で作った釣り針や銛(もり)、ネックレス、腕輪、ヘアピン、腰飾りなどの道具類、土偶や石棒などの呪術用具が出土します。まれに人や動物の排せつ物(ウンチ)が出土することもあります。日本の土は火山灰などの酸性土壌で木や骨も腐らせてしまいますが、貝塚は貝がたくさんまとまっているので炭酸カルシウム分で中和され、腐らずに残っているのです。貝塚には死者や飼っていた犬を丁寧に埋葬したお墓も作られます。貝塚は、私たちがイメージする単なる「ごみ捨て場」ではなく、自然の恵みや生命に感謝して再生を祈る場でもあったのです。
東松島市宮戸の里浜貝塚西畑地点では、100年足らずの間に厚さ1メートル以上もの貝層が形成されています。数軒のムラで貝ばかり食べていたのでしょうか? 貝は汁物で食べるほか干物にして保存食にしていたと考えられます。干物は塩分を含み、塩分摂取の難しい内陸のムラの人々と物々交換していたかもしれません。私のように毎晩お酒のさかなにしていた縄文人もいたかもしれませんが。貝塚は貝の加工工場でもあったようです。
貝塚を詳しく調べると、貝や魚の種類から季節ごとに何を食べていたか探ることができます。貝の表面の筋や大きさ、魚の大きさから、何年成長した貝や魚を食べていたかも分かります。埋葬された人骨の分析では、縄文人のDNA情報も捉えられてきています。狩猟で捕獲した鹿やイノシシも自分たちが食べる以上には捕まえず、長く安定した食料捕獲環境を持続するようにしていました。今でいう「持続可能な開発目標=SDGs」を実践していたともいえるでしょう。
■生活情報の宝庫
貝塚は縄文時代の人々のごみ捨て場であり、再生を願う場であったのですが、考古学者にとっては当時の生活を知ることのできる情報の宝庫、宝の山、タイムカプセルなのです。貝塚遺跡に行っても、貝の堆積した様子は見ることができませんが、石巻市博物館や奥松島縄文村歴史資料館に行くと、貝塚の貝層をそのまま剥ぎ取って展示しているので宝の山を見ることができます。
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