外国人材の受け入れ 人権軽視の制度、改正急ごう 社説(6/9)

 外国人技能実習生への深刻な人権侵害が後を絶たない。実習先からの圧力や言葉の壁もあって、表面化したトラブルは氷山の一角だろう。

 政府内では、古川禎久法相が外国人材の受け入れに関する勉強会を立ち上げるなど、見直しの動きも出始めている。外国人が安心して働き、生活できる環境づくりに向けて抜本的な改革を急ぎたい。

 宮城県内では4月、水産加工会社(石巻市)を解雇された3人が、認可法人「外国人技能実習機構」の仙台事務所職員に労働組合からの脱退を促された問題が発覚した。

 解雇後に個人加盟の労働組合「仙台けやきユニオン」(仙台市)に加入して仙台事務所に相談した際、職員は「職場に戻るには労組脱退が条件」と会社側の意向を伝え、その後も脱退したかどうか確認するメールを送っていた。

 監督する立場の機構が会社側の不当労働行為に手を貸した形で、後藤茂之厚生労働相が衆院厚労委員会で不適切な対応を認める事態になった。

 技能実習は前身の研修制度の時代から「技能移転」を建前としながらも、実際には労働力不足の穴埋めに利用されてきた。違法な長時間労働や賃金不払い、労災隠しなどの横行が度々問題になったにもかかわらず、これまで改善に向けた動きは低調だった。

 外国人労働者を巡っては2019年の改正入管難民法施行で、労働力不足が深刻な介護や農業、機械製造など14分野について新たな在留資格「特定技能」が創設された。

 特段の訓練を受けずに働ける「1号」と「2号」の区分があり、1号は在留期間が5年に制限されるのに対し、2号は制限なく更新でき、家族の帯同も可能になる。

 しかし、2号の対象となるのは建設と造船・舶用工業の2業種のみ。5万人近い特定技能のほとんどは1号で、その約8割は最長5年の技能実習を修了し、特定技能に移行した人たちだ。

 厚生労働省の調査(21年)によると、25~29歳の技能実習生の平均賃金は16万4000円で、特定技能でも19万4000円にとどまる。同じ年代の正規雇用の一般労働者に比べ8万6000~5万6000円の開きがある。

 技能実習、特定技能1号の通算10年間、こうした低賃金で働き、家族と暮らすことも許されない状況は、若い世代であっても明らかに酷だ。

 在留期限付きの外国人労働者に依存し、劣悪な労働条件を温存し続ける限り、日本人の働き手はさらに集まりにくくなり、産業自体の衰退にもつながるはずだ。

 もはや技能実習制度は廃止を視野に検討を進めるべきだろう。特定技能についても2号に一本化するなど、思い切った改革を求めたい。

 家族とともに日本で暮らす権利を認め、柔軟に長期滞在や永住への道が開かれる制度の実現が不可欠だ。

関連タグ

河北新報のメルマガ登録はこちら

企画特集

先頭に戻る