「二重基準」の難民対応 参院選・よどむ民意(2)外国人への視線

 無数の弾痕が残る校舎、マンションの地下駐車場で空爆におびえる市民-。

 大型スクリーンに映されたのは、ロシアの軍事侵攻を受けるウクライナの首都キーウ(キエフ)近郊イルピンの惨状だ。

 「あちこちに花が咲く美しい街でした」。イルピンから名古屋市に避難したエリザベータ・コロトコバさん(22)が青と黄のウクライナ国旗が掲げられた会場で、言葉を詰まらせた。

 5月下旬、仙台市での講演会に招かれた。「もっと持続可能な支援の在り方を考えるべきだ」。進行役の大学教授の訴えを、約60人の参加者は真剣に聞いた。

 出入国在留管理庁によると、国内のウクライナ避難民は6月13日現在で1299人。政府は90日間の「短期滞在」の在留資格を与え、1年間の就労も可能な「特定活動」に変更できるようにするなど、積極的な受け入れ姿勢が目立つ。

 2世帯3人が身を寄せた石巻市は災害公営住宅を提供し、独自の支援金も配る。ふるさと納税で生活費を募る仕組みも整えた。「手探りだが、可能な限り避難民のニーズに応じたい」と担当者は話す。

 官民挙げた手厚い支援の輪が東北各地にも広がる。

募金箱を掲げ支援を訴える在日ミャンマー人の若者たち。「忘却」を恐れている=5日、仙台市青葉区一番町3丁目

 「軍の空爆で家に戻れない人たちが30万人以上もいます。仙台の皆さん、力を貸してください」

 3年ぶりに仙台・青葉まつりが開かれた5月15日、7人のミャンマー人が仙台市中心部のファッションビル前に立った。民主派指導者アウンサンスーチー氏の写真が貼られた手作りの募金箱を抱え、祖国の惨状を訴えた。

 2021年2月にミャンマーで起きたクーデターを機に、同5月に発足した団体「ミャンマー東北」のメンバーはほぼ毎週末、同じ場所で活動を続ける。

 軍の民衆への弾圧を伝えるため、資金を出し合って作ったチラシはなかなか手に取ってもらえない。立ち止まる人もいない。

 「民衆が苦しんでいるのはウクライナもミャンマーも同じ。でも、関心に違いがある」。リーダー格の女性(31)が漏らす。

 ウクライナ侵攻に抗議する街頭演説やデモ行進と活動が重なる日もある。先方に参加する日本人の多さにうらやましさも覚える。

 秋田市の国際教養大2年森田陽湖さん(21)は、同市で7月に開くドキュメンタリー映画の上映会の準備に追われる。4月に設立した難民問題を考える学内団体の代表を務め、仲間13人で上映会を企画した。

 映画はシリアとエリトリアの2組の難民を追う。「日本でほとんど取り上げられない難民の現状を知ってほしい」との思いから選んだ。

 高校1年の時、留学したイタリア・シチリア島で目の当たりにした多くのアフリカ難民が活動の原点にある。大学で日本の難民認定制度を調べていたさなか、ウクライナ危機が起きた。

 「日本はこれまで難民の受け入れに否定的だった。今の状況はダブルスタンダード(二重基準)に感じる」。上映会は、芽生えた違和感を伝える良い機会になると思っている。

 続く新型コロナウイルス禍、収束しないウクライナ情勢。倦(う)みと不安が社会を覆い、鬱屈(うっくつ)した空気が私たちを包む。参院選を前に民意の現在地を探る。

LINEアンケート結果の詳細はこちら

 河北新報社は8~12日、「読者とともに 特別報道室」の無料通信アプリLINE(ライン)で友だち登録する読者に今回の連載内容に関連するアンケートへの協力を呼びかけ、311人から回答を得た。一般の世論調査とは異なる。

関連タグ

河北新報のメルマガ登録はこちら

企画特集

先頭に戻る