河北春秋(6/18):「浪江に帰りたい」「富岡で生きたい」。東…

 「浪江に帰りたい」「富岡で生きたい」。東京電力福島第1原発事故で古里を追われ、帰還の願いかなわぬまま旅立った人たちの無念を、改めて思う。「原発事故さえなければ」▼原発事故で避難した住民が損害賠償を求めた集団訴訟で、最高裁はきのう、国の責任を認めない判決を言い渡した。国が東電に津波対策を取らせても地震と津波の規模が想定以上で、事故は防げなかったと判断した▼裁判官が福島の現地を視察した上で、国の責任を認めた仙台高裁判決は「不誠実な東電の報告を唯々諾々と受け入れ、規制当局に期待される役割を果たさなかった」と断じていた。最高裁は津波の予見可能性、国が対策を命じなかったことの是非に踏み込まずに責任を否定した▼代理人の弁護士は判決文を握りしめ「被害に全く向き合っていない」と訴えた。今も3万人が避難する。福島県の震災関連死は2331人(4月7日現在)に上る。今回の訴訟4件の原告のうち110人以上が5月末までに亡くなっている▼原子力は国策で進められた。「安全神話」を喧伝(けんでん)し、事業者とのなれ合いも指摘された。東電は今月、福島訴訟の原告団に「人生を狂わせた」と謝罪している。「国に責任はない」という。原発事故から11年3カ月の歳月を思い返してみる。(2022・6・18)

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